
先日発売された512BBもかなり嬉しかったが、アオシマの1/32楽プラシリーズに288GTO(正式名称は単に「GTO」とするのが正しい)が加わって小躍りしている。切り立った分厚いノーズからどことなくクラシカルなリア形状へと繋がる迫力のワイドボディはフェラーリのなかでもこのモデル特有の魅力があり、かつてフジミが発売していた1/24モデルよりも切れ味のあるエッジの立ったボディは実車の印象をしっかりと捉えたすばらしい出来だ。

ただこのキットに問題があるとすれば、シールの量とそれを貼り付ける難度が異常に高いことだ。シールというのはある程度の面積がなければその粘着力を存分に発揮できず、直径1mm程度の特に小さなものはピンセットで拾うのにも一苦労するし、ボディ表面に刻まれたディテールに圧着してもすぐに動いてしまう。さらにごく細いスリットも執拗にシールで再現されており、何よりボディ上下の境目に走る黒いラインや窓枠の下端などは、シールを貼ったあとで次のパーツを取り付ける工程でシールがズレてしまわないようかなりの技を要求される。

また説明書のイラストも上下左右が頻繁に入れ替わるため、モデルの天地とシールの上下左右を間違えずに貼るのにはオトナでもかなりの空間把握能力と注意力が必要だ。このシリーズの対象年齢は10歳に設定されているが、同梱された大量かつ詳細なシールを設計者の意図通りに貼りこなせる年少者はそう多くないだろうと感じた。極細のシールで再現されたボディサイドのトリミングや前後のスリットなどは、シールを貼らずに段落ち部分だけをアクリルマーカーでざっと塗って、はみ出した部分を爪楊枝などで摺り落とせばシールを貼るよりも圧倒的に楽に、かつ美しく仕上がる。

これまで楽プラを何十台も組んできたなかで、ここまで微細なシールを大量に貼らせるものはなかった。ところがフェラーリになると、実車の細かな色分けやトリムまでシールで”徹底再現”する必要があり、シリーズ名にある「楽」とは乖離しているように思う。アオシマがわざわざ自分たちの商品コンセプトを損なうような仕様にしたいとは思えないので、(これは完全な邪推になってしまうのだが……)ライセンサーであるフェラーリ側の監修において実車の再現に対する要求が相当に厳しいのではないかと睨んでしまう。実車どおりであることを守るために「楽プラ」が楽じゃなくなっているのだとしたら、なんとも本末転倒な話である。

リア周りの造形やディテールはGTOの特徴をシンプルなパーツ構成で存分に表現した素晴らしい設計。ここもシールのかわりにアクリルマーカーを使うことであっという間にシャープに塗り分けられた(つや有りの透けない赤いプラスチックがなんと頼もしいことか!)。また、ドア後ろにあるエアインテーク内側をフューエルリッドの外観を再現しながら固定する方法などは設計者の快哉が聞こえてきそうな最高のパーツ分割だ。

おそらくこのキットを手にした多くの人が大量のシールに慄き、思うように貼れないことに苦心するはずだ。しかしプラモデルにおいてシールはあくまで手段であり、それを使うことそのものは決して目的ではない。楽プラというシリーズのコンセプトとして塗装指示ではなくシールという手段が選択されているわけだが、完成というゴールを目指したければ(そして「楽」をしたいのであれば)あなたの持っている道具を自由に使い、このキットの持っている高いポテンシャルを気持ちよく味わって欲しいと心から願う。