
エクスプラスからメタルナ・ミュータントのプラモデルが出たっ!巨大な脳味噌を剥き出しにして、ギョロッとした目があり、両腕の先はハサミになっています。コイツは1955年の映画『宇宙水爆戦』に登場するミュータント(人工生物)なんですが、映画を見たことがない人も多いだろうし、メタルナ・ミュータントという名前を初めて聞いた人もいると思います。何を隠そう私もそうです。じゃあなんで2026年にこれをプラモデルにするのか。そこがこのキットでいちばん面白いところなんだっつう話をします。
『宇宙水爆戦』そのものは、1950年代のアメリカSF映画を代表する一作として評価されており、よくある「昔のB級SF映画だからヘンチクリンなところを笑って観ましょう」という類の作品ではありません。ただしメタルナ・ミュータントは映画の最初から最後まで暴れ回る大スターではなく、終盤になって現れる異様な存在。にもかかわらず、その大きなアタマと昆虫めいたディテールは人々に強く印象づけられ、『宇宙水爆戦』のアイコンとなりました。アメリカでもトイ/ホビーの文脈でその造形が幾度もプロダクトになっていることからもわかるとおり、いわゆる脳味噌を剥き出しにした異形の宇宙人を語るとき、メタルナ・ミュータントはその代表格としていまも強烈な存在感があります。

1983年、日本のアンティーク玩具専門店であるビリケン商会が初のオリジナル商品を企画します。ハマハヤオ氏の手による原型を複製したメタルナ・ミュータントは日本で最初のソフトビニール製ガレージキット(言ってしまえばインディーズのソフビキット)として歴史に刻まれることになったのです。いまでこそ「原型師の情熱と個性を注ぎ込んだ少量生産のソフビフィギュア」はひとかどの地位を築いていますが、当時は「そもそもそんな手法があるのかよ」という冒険だったのです。

エクスプラスがこれまでリリースしてきたプラモデルを眺めてみると、そのラインナップには一定の美学があります。海外の古いムービーモンスターに始まり、ガメラがあり、デビルマンのシレーヌがあり、綾波レイがあり……。もちろんキャラクターそのものの人気もあるのでしょうけども、昔のオーロラ製モンスターモデルを思わせる貼り箱、どう考えても過剰にコストの掛かった台座、固定ポーズの像を組み立てて自分で色を彩色するフォーマット。アメリカで花開いたモンスターのプラスチックキットのフォーマットを借りながら、ガレージキットの世界で長く記憶されてきたモチーフを新作プラモデルとして並べていくという営みの結果として、そこには「立体物として愛でたくなるキャラクター史/フィギュアの造形史」が浮かび上がってきます。

そう考えると、メタルナ・ミュータントというのはかなりの危険球です。登場した映画の知名度もそこまでないし、若い人にも名前が通じるキャラクターはほかにも山ほどあるはず。そのなかで、日本のソフビキットの出発点になった怪物へわざわざ戻り、新しく原型を作り、大きな金型を起こしてプラモデルにするというのはなかなかのこと。40年以上前にビリケン商会のが世に問うた怪物を、いまこそ「歴史の模型」としてもう一度置き直さなければなるまいて……というエクスプラスの強力なメッセージを受け取るほかありません。

パーツを観察すると、頭部の血管やズボン(あえてズボンと言おう!)のシワにも猛烈な情報量があり、これまで立体化されてきたメタルナミュータントのなかでもかなり劇中の姿に忠実な造形です。でも、それだけを評価して「最近のプラモデルはすごいですね」と言うだけでは、この商品の価値は測れません。メタルナ・ミュータントという題材に、なぜいま新しく金型を作るだけの価値があると判断したのか。エクスプラスがその判断をしたということがめっちゃ大事なのです。

えらそーに言ってますが、私もこの大筋をパイセンに聞くまで『宇宙水爆戦』のうの字も知りませんでした。知らないキャラクターを買うなんて……と思う人もいるかもしれませんが、プラモデルは知らないものへ近づくための道具でもあります。知らない戦車や飛行機とお近づきになるのと同じように、まずこの妙な怪物を組んでしまいましょう。さすれば、40年以上前にこの怪物から新しい模型の遊び方を始めた人たちのことまで見えてくるのです。