
いまや家電量販店のディスカウント販売や通販サイトの充実により、絶滅危惧種となってしまっている街の模型店ですが、先日、新御徒町の佐竹商店街を訪れた際に偶然発見したお店が、こちらのオオミナトさん。
店内は雑然としており、まるでタイムスリップしたかの如くオールドスクールな雰囲気でしたが、現在のメイン商材はトレーディングカードゲームになっているようで、子供達の目に着きやすい入口付近の陳列棚に大量に並べてありました。
肝心の模型に関しては、現在は殆ど販売を行っていない様子で、店内の奥に数体のガンプラとタミヤのスケールキットが数箱だけ置いてある、というような状況でした。そんな「兵どもが夢の跡」な、店内に於いて、一際目を引いた商品がこちら。軽く10年は熟成したガンダムカラーの数々です(ガンダムは新製品に合わせてそのつど専用のカラーの3本セットが発売されていたのだ)。

これらのガンダムカラーは瓶中の溶剤が既に揮発してカピカピになっているであろうことが想像に容易かったのですが、どうしても欲しくなってしまったのがコチラ!

とくに”HG「ゼクアイン」用”のブルーをどうしても手に入れたいと思い、恐る恐る店主に声を掛け、中身を確認させて頂き、合意の上で手に入れてきたのがコチラだ。すごい。

GSIクレオスが定めた「センチネルブルー」と呼んで差し支えないかもしれないこの塗料を現世に呼び戻すべく、儀式を執り行います。差し当たって、復活に必要な供物としてこちらの真・溶媒液を投入。溶媒液というのは溶剤ではなく、溶剤が揮発してビンの中で粘度が高くなったり、乾いてしまったMr.カラーを復活させるためのもの。硬化してしまった樹脂を溶かし、元の状態へと戻します。

先ずは試しに寒冷地用ジムのカラーにて実験。真・溶媒液だけを投入したもの、ツールクリーナー(とても成分の強い溶剤)を投入したもの、溶媒液7:薄め液3を投入したもの、という3種類を生成しました。
溶媒液のみだとカチカチの塗料が投入直後から溶け始めますが、完全に溶かすにはある程度漬け込んで、顔料が柔らかくなるのを待った方が良さそうです。なかなか溶けなさそうなホワイトはツールクリーナーでみるみる溶けましたが、塗料として使えるのか謎。結論からすると、実験的な配合として溶媒液と溶剤を7:3で投入したレッドは滑らかに溶けきっており、一番新品の塗料に近い印象になりました。この比率は塗料自体の顔料の種類に拠っても変わってくる可能性が有りますが、基本的には溶媒液を多めにした方が間違いないと思われます。
この結果を踏まえ、ゼクアインカラーの復活の儀を執り行います。


何度も言います! 溶媒液7:薄め液3!! 一日寝かせて、撹拌!撹拌!!
そして彼は見事に復活してくれました。


皆さんは、塗料を撹拌している時の調色スティックと瓶がカチカチと触れ合う音がハイハットの音に聞こえてくる事はありますか?
私にはあります。
そんな時はレコードを流し、ジャズドラマーになった気分でノリノリで撹拌をすれば、「この位混ざればいいや」とおざなりになってしまいがちな撹拌作業を自然と延長する事ができ、塗料本来の色味をより引き出せるかもしれませんよ。
ちなみにこちらのレコードは、超絶技巧が冴えまくるドラマーLouis Hayesの1976年録音の一枚『THE REAL THING』。
私のお気に入りのジャズレコードレーベルであるMUSE RECORDS(ハードバップやスピリチュアルジャズの名盤を数多く生み出した名門レーベル)からリリースされた一枚で、金管~鍵盤まで個人的にお気に入りなメンバーが顔を揃えており、特にリードトラックとなるA1, St. Peter’s Walkは、トランペット担当のWoody Shawの出足から切れ味の鋭いブロウと、Ronnie Mathewsの繊細ながらも疾走感のあるピアノソロ、そして、あんた腕何本生えてんの?と言いたくなるレベルの呆れるほど爆叩きのLouis Hayesのドラムソロが楽しめる一曲になっております。Apple Music等のサブスクサービスにて配信もされているみたいなので、秋の夜長のプラモ製作時間をジャジーに彩ってみては如何でしょうか。