
この夏、タミヤの1/24ミニが3種類まとめて帰ってきました。7月にオースチン ミニクーパー 1275S Mk.I、8月にはモーリス ミニクーパー 1275S Mk.Iとモーリス ミニクーパー レーシング。前の2台は継続的に生産される定番製品ですが、レーシングだけは生産休止品を一時的に復活させる「特別販売製品」であります。じつは私、3種類ともいままで組んだことがありません。ならばオーバーフェンダーが付いていて、ゼッケンも貼れて、見るからにやんちゃなレーシングを味わおうじゃないの。結局こういうのはカッコいいと思ったやつから作ればいいのです。

箱を開けて最初に「オッ」と声が出たのは、ボディがブリティッシュグリーンのプラスチックだったこと。カーモデルのボディというと白やグレーで成形されているものも多く、それは好きな色に塗装する人にとってたいへん都合がいい。しかしイェーガーマイスターのポルシェのプラモデルを開封してオレンジ色のボディが出てくると嬉しいのと同じで、パッケージに描かれたクルマと同じ色の物体がいきなり目の前に現れるというのは問答無用で盛り上がります。
ガンプラなら「最初から色が付いている」というのは完成への距離を縮めるための当たり前の仕組みに見えるかもしれませんが、スケールモデルの色付きボディはちょっと違う。別にこれが完成形というわけではないし、全部塗りつぶしたっていい。でもこの緑色は「とりあえずこの色を活かして組んでみようかな」という選択肢でもあるわけです。何もしていないのに、もうこのミニには少しだけ人格があるっていうか。

レーシング仕様らしく、ノーマルのミニにはないオーバーフェンダーやロールバー、バケットシートといったパーツが用意されています。そして部品を眺めていると、いまさらながらミニというクルマが文字通り本当に小さいことに驚かされます。1/24のプラモデルなのに、ホイールなんて手元にある1/32のアオシマ製楽プラよりもだいぶ小さい。実車の寸法をなんとなく知っているつもりでも、こんなに小さなタイヤをシャーシの四隅に置いて踏ん張っているのか、という実感はまた別物です。オーバーフェンダーがあれほど大げさに見える理由までわかった気がしてきます。

いっぽう車体の中身はまったく軽くございません。最近の1/24カーモデルにはエンジンを省略して外観を気持ちよく組み上げるものも増えていますが、このミニにはエンジンがあり、サスペンションがあり、その周囲の細かな部品までかなり仔細に用意されています。説明書を開けば細かな塗り分け指示が次々と現れて、「これは全部やるのか……」とちょっと怯むくらいです。
しかしボンネットは開閉式。完成したあとにエンジンルームを眺めたいなら存分に塗ればいいし、閉じたまま二度と開けませんよと決意したなら見えるとこだけ気持ちよく作ればよろしい。屋根の色分けや各所のメッキモールも含めて、きっちり仕上げようと思えばやることはいくらでもあります。もちろん緑色のボディをそのまま使い、この小さなクルマのカタチが現れていく様子だけを楽しんだっていい。箱を開けたときにはずいぶん親切そうな顔をしていたのに、手を入れようと思った瞬間にはどこまでも付き合ってくれる。なかなか懐の深いプラモデルです。

しかもこれはレーシングカーであります。箱絵のカラーリングを再現するためのデカールはもちろん入っているけれど、このプラモデルのオーナーはあなたです。きれいなツヤのあるブリティッシュグリーンに仕上げてもいいし、自分のチームがレースに持ち込むならどんな色にするかを考えてもいい。長年使い込まれて塗装がカサつき、ちょっとサビまで浮いたような姿だってミニなら妙に似合いそうです。

カーモデルを前にすると、ついつい「ボディはきれいに塗装して、クリアーを吹いて、研ぎ出して……」と完成までの正しい作法を考えてしまいます。でもこんなに小さなクルマを目の前にしていると、「自分ならこのミニをどんなふうに走らせるかな」と想像するのも同じくらい正しい作法だと思います。昔の名車の栄光に思いを馳せつつ、同時にまだどこも走っていない小さなミニのこれからのことも考えられる。過去も未来も箱の中に入っているのが、このプラモデルのいちばん楽しいところ。特別販売製品のレーシング仕様を見つけたら、まずは箱を開けてこの緑色を味わってください。そこから先をどうするかは、オーナーであるアナタ次第です。そんじゃまた。