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【レビュー】模型は記憶の容器/TAMIYA香港で出会った香港タクシーミニ四駆という最高のお土産

 7年ぶりに香港に行った。狭い街区のなかに異様な密度で模型店が立ち並んでいるのは相変わらずで、最新製品とそれを眺める模型ファンたちの姿は日本の模型店とほとんど変わらない。そして今回買おうと思っていたのが香港タクシーのミニ四駆である。日本のミニ四駆マニアのあいだでも知られている香港限定商品だ。

 香港タクシーは、あの街のシティスケープそのものである。高層ビルの谷間を流れる赤いクラウンコンフォート。結局今回はひたすらホビーショップを徒歩でハシゴしたので公共交通機関はバスしか使わなかったのだが、しかしあのドス赤いタクシーを見ると「ああ、自分はいま香港にいるなぁ」と強く感じる。

 ネイザンロードから少し裏手に入った油麻地のTAMIYA PLAMODEL FACTORY HONG KONGを訪れると、新橋の旧店舗を思わせる黒いファサードにツインスターのロゴが出迎えてくれる。このブロックはとくにホビーショップが多く、わざわざ日本からプラモデルを眺めに行くだけの価値があると言ってもオーバーではない。

 おなじみのキットが並ぶショーウィンドウに安心するが、そのなかにローカル色全開の香港タクシーも混ざっている。世界共通のブランド体験の中に都市固有の記号が差し込まれ、毎日プラモデルを触っている自分も「ようこそ」と改めて手招きされたように感じるのが面白い。

 店内の目立つところに限定アイテムが陳列されている。韓国限定のヒートエッジやエアロサンダーもかなりカッコいいのだが、香港に来たらやっぱりタクシーが欲しい。限定と謳うためのお手軽な色替え商品ではなく、ご当地のアイコニックなクルマをわざわざミニ四駆にしているのが素敵だなぁと感じる。

 箱を開けると、空力を誇張したレーサーとは違い、FM-Aシャーシ用に起こされたスケールモデルライクなボディ。もちろん専用の金型が起こされていて、赤いボディとシルバーのルーフは別パーツ。メッキホイールの質感、黒ではなくグレーのタイヤもどこか香港の湿った空気を感じさせる巧みなカラーチョイスだ。

 「的士」の文字がうれしいシールと漢字ファーストの説明書がお出迎え。いつものタミヤフォーマットなのに、言語が違うだけで纏う空気は大きく変わる。模型は記憶の容器だ。旅行の体験をそのまま持ち帰れるという意味でも、ミニ四駆を知っている人となら必ず話に花が咲くにという意味でも、きわめて優秀なお土産である。

 今回香港のショップを訪れるまで知らなかったのだが、グリーンのボディをあしらったバージョンも発売されていた。これは新界エリアを走るタクシーをイメージしたものなのだが、ただ色が違うだけでなくレブチューンIIモーターを搭載したエディション。ネオンイエローのシャーシはもちろん、タイヤのサイドウォールに現地代理店のロゴ入りなのもレーシーさを演出している。

 FM-Aシャーシのハコ車であるからして、おそらくレーススペックの戦闘力を期待するものではないだろう。しかし、香港タクシーの組み立て模型としては唯一無二の存在であり、ただ机の上に置いておくだけでもかなり嬉しいアイテムだ。まして、走りを意識したグリーンの存在はそれ自体がセルフパロディ的で非常に面白い。多層構造になった文脈を味わえる模型ファンならば、この洒脱なセンスに思わず反応してしまうはずだ。香港に行くチャンスがあれば、みなさんもぜひ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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