
兵士とともに戦場を駆ける車両は戦車や装甲車といった装甲戦闘車両(AFV)だけではありません。物資を運ぶトラック、足代わりのジープ、そして傷ついた戦車を助け出す「戦車回収車(ARV)」の存在を忘れてはいけません。

今回紹介するタミヤのM26装甲戦車回収車は、第二次世界大戦中にアメリカ軍で運用された「戦車用の超巨大なレッカー車」です。以前このキットの箱を開けたときから、そのいかにも「戦場ではたらく車」らしい姿に惹かれていましたが、実際に組んでみると外観以上に面白いメカニズムが次々と姿を現しました。

まずはシャーシの組み立てから。説明書を開いて驚くのがいきなりシャーシのフレームができていているところから始まることで、なにか工程を飛ばしたのかと錯覚します。ワンパーツで戦車より大きいこの部品に大振りな部品をドカドカと接着していくので拍子抜けするほどあっさりと車体の形が現れます。

ここで注目してほしいのが後輪を駆動するタンデムアクスルユニット。一般的なトラックは車輪をシャフトやギヤで駆動しますが、本車は自転車やバイクのようにチェーンで駆動する方式を採用しています。これを採用した理由のひとつに不整地で戦車を牽引する際に発生する「急激な超高負荷」で、先にチェーンが切れることによりシャフトがねじ切れたりギヤが破損したりするのを防ぐためというのがあります。万が一切れてもチェーンなら戦場での修理が容易ですからね。装甲キャビンや機銃ともども、ハイウェイを走る民間レッカー車とは違う「戦場の車」としての現実的なスパルタンさを感じます。

車体が形になったら次は心臓部のタンデムウインチ。シャーシとはうってかわって細かい部品の接着を進めながら説明書を読み進めると部品の名称に「エンジンクラッチペダル」の文字が。

なるほど、ウインチの動力はエンジンから直接引いているのか! これはエンジンの力でミキサーを回すコンクリートミキサー車や、ロータリーを回すトラクターなどと同じ考え方です。戦車を救出するためのいかつい軍用車を組んでいたはずなのに、こんなところで急に見慣れた「はたらく車」と地続きになりました。キャプションひとつで、目の前の部品が何をしているのかが見えてくる。いい説明書です。

こうして完成した本車、AFV主体のMMというワールドに今までなかった「はたらく車」の遺伝子がガッツリ組み込まれ、シリーズの楽しみ方がさらに広がったと言えるでしょう。

そう、このキットは完成したところからが本番。そのまま飾ってもよし、戦車を牽引させてもよし、味方の車両を引くか、敵車両を引くか、破損の具合はどうするか…そんな遊びの広がりを感じさせる、このキットが持つ楽しさはどこまでも終わりません!