
ハセガワが完全新規開発のAE86スプリンタートレノをリリースしたと思ったらアオシマからAE86レビンのバリエーションキットが発売された。『頭文字D』第25巻で秋山渉が戦った仕様なのでスーチャー装備でグリルを取っ払った開口部の向こう側にオイルクーラーが見えている……というのを再現したキットである。

アオシマのハチロクレビンは初出が2006年。パーツ数はわりと少なめで、内装や灯火類が色分けされているのが嬉しい。足回りにもバネを仕込んでサスペンション機構が再現されているなど、ただひたすらに実物を精緻にトレースしたスタティックな模型というよりも、比較的手軽に実物の雰囲気を味わってほしいな〜という思想が込められているように感じられる。ハセガワやタミヤの最近のキットはパーツが多いなと感じることもしばしばなので、この時代のアオシマ製プラモのパーツ数くらいが心地よく組めるゾーンなのかもしれない。

実際に組むとパーツ少なめ思想のありがたみが具体的に感じられる。たぶんノーマルのハチロクレビンを組み立てるだけならちょっとしたプラモデル工作の経験があればなんとかなるだろう。反面、頭文字Dに登場する仕様なのでなんの手がかりもないところにロールバーを装着するなど「改造とまではいかんけど、ユーザーのスキルにある程度寄りかかった設計だな」と思うところも混じってくる。あらゆるところに接着のガイドがあるようなキットしか組んだことがないとちょっと面食らうかもしれないが、カスタムという少し特殊な遊びを追体験していると思えればこっちのものだ。

なにより良いなと思うのがクリアーパーツの色分けだ。灯火類は透明、クリアーオレンジ、クリアーレッドのプラスチックで用意されており、メッキパーツを組み合わせたり下地にシルバーを塗ったりすることで実感が伴う。とはいえメッキパーツの寸法がやや大きく感じられ、ヘッドライトやマフラーなどは説明書どおりに組もうとするとなんだか収まりが悪い。手慣れたユーザーなら正しい位置に収まるようパーツを加工できるかもしれないが、そうでないユーザーにとっては少々バッドエクスペリエンスな気がする。

問題はレビン/トレノのチャームポイントであるボディの塗り分けだ前後バンパーは黒いパーツが用意されており、カーボンを思わせるボンネットもわざわざ黒いプラスチック。しかしボディ本体は白いプラスチックであり、下半分を(白いラインを残したりフェンダーの曲線をトレースしたりしながら)黒く塗る必要がある。正直言ってこれは組み立ての難度と不釣り合いなくらいハイレベルな工程になる。灯火類や内装が色分けされていても、いちばんむずかしい黒の塗り分けは丸投げ……となると、尻込みしてしまう人も多いだろう。

アオシマは「楽プラ」のブランドで数多くの接着/塗装不要キットをリリースしている。たとえばこのキットに(多少ボディのディテールが潰れてしまうというデメリットに目を瞑ってでも)ボディのツートンカラーを表現できるシールが入っていたらどうだろうか、と夢想する。スナップフィットと接着の間に横たわるギャップよりも、「シールを貼るだけ」と「塗料を揃えて高度なマスキング塗装する」というギャップのほうがよほど大きい。オーセンティックな模型の作り方は何があっても受け継がれていくものだと信じているが、アオシマの従来製品にも楽プラ的な要素が入ってくれば、プラモデルの楽しみ方も幅が広がるのではないかと考えている。