
ついにと言うか、とうとうと言うか。ハセガワから完全新規開発のAE86スプリンタートレノが発売されました。アオシマとフジミのキットがいつでもどこでも手に入るという状況においてなお、ハセガワが「イケる」と判断して金型を新規に起こしたのは、ひとえに『頭文字D』というマンガのおかげで伝説的な存在になり、いまや程度を問わず世界的に超高額で取引されるマシンとなったハチロクの強すぎる人気……つまり零戦とかティーガーがいろんな会社からプラモデル化されるのと同じ領域に入ったのだなぁと感じ入るわけです。

ここでいやスゴイなと思うのがホイールの造形です。14インチアルミですが、真ん中のキャップの部分は前期型と最初期型がハナから造り分けられております。リアのワイパーが最初期型のキャップと同じランナーに入っているので中期〜後期も今後それぞれ作り分けていくのだろう……ということが想像できます。このへん、「とりあえず人気のあるところから出してみて、様子を見ながらパーツを追加していろんなバリエーションに対応していく」という手法ではなく、とにかくAE86 スプリンタートレノのモデルライフを縦断しながら各グレード、そしてレース仕様に至るまで広く立体として歴史を刻んでいくぞという気構えを宣言しているように見えます。

デビュー時の姿にこだわり、その後の仕様変更にも対応する……というプラモデルはバリエーション展開のためのパーツ分割で組みづらいものになりがちなのですが、未来図をしっかり描いているからこそキットは必要最低限の分割で、塗りやすさ組みやすさにもしっかりと目配せした設計になっています。サイドモールは別パーツとすることで塗り分けも楽ちん。フロント/リアはマスキングが必要な構成ではあるものの、覚悟を決めればクリアできる部分です。フェンダーアーチやモール上の細い黒帯のデカールが入っているのもGOOD。

内装は立体感がありながらもスッキリとした構成で、褐色系を多用したインテリアは現代のスパルタンなスポーツカーとはやや異なる趣き。このへんは後期のブラックアウトした印象にまとめてもぜんぜん成立するところだとは思うので、プラスチックの色をそのまま活かしてボディ色だけ頑張っちゃおう〜みたいな楽しみ方もOKでしょう。

ハセガワ製カーモデルの特徴である裏返した時の立体感はもちろんAE86でも健在。シャーシとは別体となった駆動系や排気系、プレスによって入れられたリブ、フレームに開けられた穴など、現代の仔細な彫刻によって雄弁に語られる「ハチロクっちゅうのはこういうクルマなんすよ」という表現は、おそらくこのモチーフを幾度となく組み立ててきた人にとっても新鮮に映るはずです。これから豊かに花開くであろうハセガワ製AE86の世界を、まずはそのデビュー当時の姿でもって味わいましょう。