最新記事やプラモデル情報を毎日お届け!
follow on Xをフォロー!

【レビュー】小さなバルジから巨大な歴史を覗き見る/タミヤ最新作「Bf109 G-6 後期生産型」に込められたエースたちの戦い

 タミヤから発売された1/48傑作機シリーズ最新作、「メッサーシュミット Bf109 G-6 後期生産型」をまじまじと眺めています。 すでに発売されているBf109 G-6のバリエーションキットではあるのですが、パッケージやメーカーの解説をサラッと読んだだけだと、「機首右側の小さなバルジ(膨らみ)が追加」「13mm機銃の弾道溝まわりのパネルラインが変更」といった、間違い探しレベルの地味な変更があっただけに見えます。

 しかし、箱を開けてランナーと説明書を読み取っていくと、タミヤがこのキットのパッケージ全体に込めたコダワリとサービスが見えてきます。ハコには大々的に書かれていない、心を揺さぶるポイントをねっとりと味わうのがこのキットに対する正しい態度だと言えましょう。

 ワタクシ的にいちばん嬉しいのが、後期型最大の特徴である「エルラハウベ」と呼ばれる新型キャノピーの恩恵。大戦機のプラモを作ったことがある人なら、Bf109のキャノピーは鳥かごのように窓枠がビッシリ入った形状だということを知っているはずです。マスキングと塗り分けの大変さももちろん……。しかし、このエルラハウベは中央から後部にかけての窓枠を大胆に取り払って一体型としたもの。これによって機体のシルエットが一気にシュッとして見えるのはもちろん、窓枠の塗り分けが驚くほど楽になるというありがたい副作用があります。同梱されている風防塗装用のマスクシール(自分でカットする必要あり)を使えば、大戦後期の栄養を速やかに吸収できます。

 もともとタミヤの1/48 Bf109 G-6はエンジンまわりのプレイバリューがとんでもないというのも大いなるバリュー。エンジンカウルをマグネットによる着脱で開閉選択式としたことにより、「スケール通りの大きさで正確に再現することができたDB605エンジン」と「立体感あふれるMG131 13mm機銃」が機首にしっかりと収まっています。ここんところの組み立てだけでも「普通なら1/32スケールの飛行機模型でやることじゃない?」と思うほどの緻密さ。前世紀に発売されたタミヤのE型(これも傑作キットだよ!?)のシンプルな構成を知っている人は驚くんじゃないかな。

 そして、このキットのパッケージに書かれていない大きな特徴がマーキングです。パッケージにはドイツ空軍所属の3種のイラストが描かれていますが、なかにはしっかり「ハカリスティ」(青い逆卍のこと。ハーケンクロイツとは出自が違うのよ)のデカール……つまりフィンランド空軍機の塗装パターンも用意されています。説明書には「フィンランド空軍所属機 1944年6月」としか書かれていませんが、機体番号から無傷の撃墜王、エイノ・イルマリ・ユーティライネンの乗機(もちろん『ストライクウィッチーズ』に登場するエイラ・イルマタル・ユーティライネンの元ネタですね)であることがわかります。

 商品ページを見ると、「第50戦闘航空団司令機が特別に装備した主脚収納時に車輪をカバーする小扉と、脚庫内部の隔壁を再現するパーツも用意」とあり、そこにヘルマン・グラーフやエーリヒ・ハルトマンといった具体名は出てきません。戦争はいつでもデリケートに扱うべきものですから、マーキングや人名を含め、スケールモデルにおいて「あえて語られない物語」にはさまざまな事情が見え隠れします。しかし、機首のボイレ、13mm機銃の弾道溝、そして高高度迎撃のための小さな主脚カバーといったディテールを手がかりに、我々は調べ、知り、思いを馳せるのです。小さな違いから、大きな物語を覗き見ること。それがタミヤ最新飛行機モデルの持つ魅力だと言えましょう。

大日本絵画
¥1,730 (2026/07/11 22:24時点 | Amazon調べ)
からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

関連記事