
マクロスメカを頑固に1/72スケールでプラモデル化し続けているハセガワからついに出てしまいました。ヌージャデル・ガーが。ヌージャデル・ガーですよ。口に出して言いたい名前であることは間違いないですけど、クァドラン・ローやグラージやリガードがイッパツで変換できてもヌージャデル・ガーはGoogle IMEの辞書に入っていないんですよ。そんなヌージャデル・ガーが新作プラモになりますと言われてもあまりピンと来なかったんですよね私。でも今日からは違います。箱開けた瞬間に恋に落ちてしまったんです。プラスチックの色に。
明度が高くてちょっとだけくすんだグリーンの上品さが本当にヤバい。うっとりしちゃう。そこに小型レーザーマシンピストルのミルクチョコレートのような淡いブラウン。なにこれ。『愛・おぼえていますか』にこんなイケメン出てきましたっけ。ハセガワの完成見本がけっこう濃いめのグリーンで塗られているのに対してすんごい爽やかで優しそうな色のプラスチックが出てきたからマジでびっくりしたんですよ。まずこの成形色を見るために買っていいですよこのプラモデル。塗るのがもったいないほどの美しさ。塗らなくても大丈夫です。

そんでよく見ると、この手のパーツですよ。めちゃくちゃデカいしなんかいままで見たことのない造形してるんですよね。確かに5本指なんで人間の手っぽくはあるんだけど、なんか指の先端が丸く平べったく膨らんでいる感じがものすごく異質。私は「よくわからない異星人のメカをよくわからないまま頑張って立体にしました!」という雰囲気が充満したハセガワのクァドラン・ローがとても好きなのですが、ヌージャデル・ガーはクァドラン・ローより人型に近いのにも関わらずより「わけのわからん造形」であり、異星的であり、これが非常にイイのです。

たとえばリガードとかグラージって人型じゃないからこそ出る旨味があるし、クァドラン・ローは人型じゃないけどわりと理解できる謎のヒロイックさがあります。これは味噌汁で育った民族にもカレーや麻婆豆腐の旨味を受け入れられる的な感覚があり、たとえば「日本人好みの味にアレンジしました」みたいなことも可能なわけですよ。あけすけに言えばファンを増やすためのデザインもできるだけの懐の深さがあるというか。
しかしヌージャデル・ガーはもっとどギツいエスニックさを備えた「見た目から予想されるのとはぜんぜん違う味がする上に自分の味覚にはない料理」をみたいなもんで、ゼントラーディのメカの中でもだいぶ人型に近いのに「誰にでもわかるヒロイックなカッコ良さを感じるアレンジにするぞ!」みたいな生半可な気持ちを寄せ付けないデザインだと思うのです。聞いたことない国の聞いたことない素材で作った、自分の食べてきたものとは味の共通言語がない謎の料理みたいな不気味さ。しかし興味はあるぞ、的な。

これをプラモデルとしてどう魅力的にするか……と考えたら、現地で食べられているヌージャデル・ガーを構成する味をしっかりと洗い出し、理解し、それがちゃんと料理の特徴であり現地で美味いとされているものなのだということを理屈はさておき納得し、「これは日本では馴染みが無いかもしれませんが◯◯という国で愛されている料理です。みなさんもこの味がわかりますか?」的なプレゼンテーションが必要になるわけですけども、そこで”現地人”として雇われたのがメカデザイナーの宮武一貴氏なんですね。

設定画の解像度が足りないと言うか、日本のレストランで提供するにあたってレシピがよくわからないところは宮武氏に新たにラフ画を描き下ろしてもらい、それをディテールとして盛り込んでいるんです。そうすることで茫洋としていた異国の料理に謎の説得力が宿り、美味い/不味いではなく「なるほどこういう料理なんですね」という強制的納得感を生み出す。異星人を理解するってそういうことなんじゃないすかね。だいぶ伝わってるのかどうなのかわからん話になってきましたけど、異星の極上の料理を、異質さすらも真摯に再現した丁寧な仕事。ハセガワの新作、ヌージャデル・ガーはそんなことを考えさせる非常に面白いプロダクトなのです。