半世紀前、世界のレースシーンと市販車との距離は近く、技術革新においては二輪車がなおリードしていた時代。本田宗一郎率いる新進気鋭の技術者集団はその先鋒であり、欧米に狙いを定めて世に放ったのがHonda DREAM CB750 FOURだ。2023年、バイク史に名を刻む名車のひとつをアオシマは決定版プラモにした。続く2025年末、「カスタム」と称してパッケージングされたのがこの『CB750 FOUR ’69 カスタム』だ。同時発売されたヨンフォアカスタムと同時代性を帯びているのだが、こちらは系譜の源流となるモチーフだ。

スピードチューニングの神と称される「ヨシムラ」の集合管は、カスタムと称する本キットの主役と言える。ヨシムラがCB750FOURで本場北米レースに挑戦するにあたり発明したバイク用集合管は、その効果とサウンドで現地を震撼させた。そしてヨシムラの集合管は国内外でヒット商品となり「憧れのレーサーカスタム」となった。キットの「黒いショート管」とはその集合管のことをさす。そして「アップハンドル」と「アンコ抜きシート」は当時の日本人にとっては規格外の図体となったCB750FOUR、そのライディングポジションを最適化するための工夫であった。現在に至るバイクカスタムの様式美、その文化的ルーツをアオシマはキット化したとも言える。
同じアオシマのヨンフォアカスタムと同じく、ヨシムラの集合管にはつや消しトップコートを吹いておきたい。その一手だけでリアリティが爆発する。キットの水転写デカールのヨシムラロゴは「本物のステッカーに見えるが!?」と模型力が凄い。細かい話になるのだが、箱絵の集合管にはヨシムラロゴが貼られていない。これは当時つくっていた集合管にはロゴが間に合っておらず「つや消し黒の集合管、それ自体がヨシムラオリジナル意匠」という、その時代性を描いたと考える。加えて今現在、この集合管は同じルックスで販売されており、ヨシムラの商品ページを覗くと本キットに近しい車両写真が掲載されているので「もはやヨシムラのプラモじゃん!」となった。是非、ページにある「SOUND」を大音量再生してこのキットと向き合ってもらいたい。メチャ盛り上がるから。

前段が長くなってしまったが、「これは無改造仕様のキットに入っているメッキされた4本出しマフラーの方が模型的に豪華じゃん」と安直に思ってほしくなかったから。プラモを組む話に進むのだが、前回のヨンフォアカスタムと同じく「もうフタしちゃうの!?」が連続するキットだった。エンジンを主とした各機構がとんでもなく緻密に彫刻されているというのに、さっさとカバーを付けると後からまったく見えなくなる。自分は思わず最後までカバーを貼らずにいた……。

アオシマ最新バイク模型だけあって、組み立てるうえでの「考え」を感じ取れた今回だ。前回のヨンフォアカスタムが10年前ほどのキットとなり、緻密さを成すための様々な試みがあってか難関も少なくなかった。それを経て、位置決めピンを用意するなど改善が見受けられた。それでも簡単に、楽プラ的に組めるキットとはいえず、プラモに適したツールとマテリアル、相応の経験値は必要となる。

それでも、伝説の名車をとことん味わって欲しいというメーカーの熱意を感じて好感を持てるし、機械が緻密に刻まれたランナーを手にしただけでもその迫力を感じ取れるので楽しい。「決定版のCB750FOUR、ご用意しました」という自信に溢れた顔が浮かぶ。

無改造仕様ではキャンディブルーの車体色がバッチリ再現されていたが、今回は同じく当時の採用色であるキャンディレッドがプラスチックの色で見事に再現されている。無塗装であってもデカール貼り、プレミアムトップコート [光沢]をひと吹きすればそれはもうね、事実上のキャンディレッドでしかなくなる。これにメッキパーツを貼るとこれまた凄い。自己肯定のライジングが凄い。いっそのこと、いったんタンクから組み始めてみてもいいのでは? オススメ。

メッキパーツ相手にメッキ剥がしてから通常接着剤で貼るか、瞬間接着剤でなんとかするかを悩んだり、ピンセット片手に「手がもう一本欲しい~」と四苦八苦するという、力と技でなんとかする場面も少なくなかった。歯応えたっぷり系ではある。でも、余暇のちょっとした時間に「今日は前輪だけ組もうかな」とチビチビとやっていくのが丁度良い、長いロードマップを共にするには素晴らしい内容だとは思う。無塗装で、タンクとカバーを光沢にして、集合管をつや消しにするだけで、二輪黄金の時代の伝説バイクが、高密度で建立するのだから。