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「さよならの向う側」にあるプラモデルの美学/アオシマのCB750に込められたエンジンという名の魂。

 「プラモデルは見えないところまで作り込むのがイイんだヨ」というのがあまり好きじゃないワタシです。見えないところは作ってもいいし、作らなくてもいい。作りたいときは作るし作らないときは作らなくていい。そういう選択肢がほしいわけです。だってプラモデル作るときのテンションは日によって違うし……。

 でもアオシマのHonda DREAM CB750 FOURのパーツを見るとそういうワガママも言ってられない。だってこれだよ。すごくない?

 こんな肉眼で見えるかどうかもわからんくらいのディテールがギチーッと彫刻されていて、なんとこのパーツを貼った上から次の工程でフタをしちゃうんですよ。この景色とお別れする。山口百恵もびっくりですよ。『さよならの向う側』が、随所にある。ふたつ噛み合うクラッチのパーツがケースに封印されるところなんて、「確かに、これは、メカニズムである!!ナルホド!!!!!」と大声で叫びながら貼っちゃうですよ。極めつけはシリンダーブロックですよ。

 フィンを一枚一枚積層していくと4つの気筒ができあがるという構成はですね、じっさいバイクのプラモデルにおいてはそんなに珍しくない。当のアオシマだけじゃなくて、同じようなことをやっているメーカーはある。でも恐ろしい精度でビシーバシーと重なっていく工程もさることながら、シリンダーのてっぺんにあたるパーツにはバルブが彫刻されてるんですよね。

 これを見たときに「いやマジだな。『タミヤのCBという超傑作に肉薄するどころか超克しなければこのマシンをプラモデルにしたことにならない!』という開発マンの意地がここに刻まれておるな!」と感じざるを得ない。だってよく考えてくださいよ。エンジンの中身なんて整備するために全バラシしない限り見えないし、完成した模型の出来栄えには1mmも貢献しない。「見えないところ」なんだから。

 でも組んだあなたはここにバルブが、大きさの違うふたつの丸い彫刻があったことを知っている。プラモデルはつくづく過程です。「完成しましたカッコいいでしょ上手いでしょ」という写真からは絶対にわからないエクスタシーがここにある。だからみなさんも、途中をよく観察し、何にビビったかを記述しなければいけないのです。完成しちゃった写真しか残らなかったら「え、途中がそんなにすごいのかよ」ということを未来人に伝わらない。最下層まで貼って、ああまだ見えるよバルブが……。ピストンが上下に激しく動く穴の奥に……。

 そしてさようなら、じつに22もの工程を経てできあがるのはゴロンとした「出来の良い塊」としてのエンジン。どうです、たどり着くまでに目にした驚天動地のディテールと執念深い内部構造への探究心は覆い隠され、「あー精密ですね、すごいですね」という感想しか出てこない。

 「あなたのすべてを きっと私 忘れません」と思いながらそっと筆を置くことにしましょう。しかしこのプラモデル、すごすぎます。パーツの貼り合わせ自体は決して難しくないのですが、いかんせんパーツ数が多くてひとつひとつが小さい。でも素晴らしい精度があり、なによりもそこにスピリットがある。CB750 FOURというマシンへの情念があらゆるところに刻まれている。あなたも目撃してください。だいぶヤバいです。ではまた次の工程で……。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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