
試作機。プロトタイプ。なんと甘美な響きでしょう。耳にした誰もが、一発で惹かれてしまうカッコ良さをもった言葉です。アニメなどでは、主人公が乗るメカに「たった一つしかない理由」を与えるための装置として使われることも多く、キャラクタープラモの世界ではおなじみのワードかもしれません。ですが、今回はスケールモデルのお話。しかも相手は、現役戦闘機であるF-22と採用試験を争い、惜しくも敗れたアメリカ空軍の試作戦闘機YF-23です。
「性能は良かったが、結果として選ばれなかった」。そんな評価とともに語られがちな機体ですが、その姿には、当時の最先端技術を真正面から突き詰めた痕跡がはっきりと刻まれています。

ステルス性が重視される現代の戦闘機は、曲面主体の滑らかな外形を持つものが多く、プラモデル化にあたっては胴体と主翼を一体化した大きなパーツ構成になることが珍しくありません。本機YF-23もその例に漏れず、箱を開けると、主翼を含めて上下二分割された機体パーツが収められています。そのため、組み立て作業の主役になるのはコックピットと尾翼。程よい情報量のコックピットを組み上げたあと、続いて2枚の尾翼を組み立てます。ここで少し面白いのが、その取り付け方法。尾翼中央の軸一本を胴体側パーツで挟み込む構造になっており、「これはどの角度で固定するのが正解なんだろう?」と一瞬考えてしまいます。

ところが実機を調べてみると、YF-23の水平尾翼は舵面を持たない全遊動式。つまり尾翼全体が動いてピッチ制御を担う構造になっているのです。軸一本で保持するキットの構成は、簡略化や妥協の結果ではなく、超音速戦闘機としてごく当たり前の設計思想を、素直に反映したものだったというわけです。「試作機だから変わった機構を持っている」というよりも、むしろ当時すでに標準となっていた空力制御の延長線上に、この機体もあったことが見えてきます。

2パーツで完成する本体部分は、流し込み接着剤でパーツを押さえつけながら少しずつ固定していき、ぽっこりとしたキャノピー(コックピット上部のガラス部分)をつければ完成です!本来は着陸脚を取り付けられますが 今回は飛んでいる状態で組みたかったのでその工程はスキップ。組んだあとは、いろんな角度から眺めてみます。筒状が多いエンジンノズルが独特の形状をしていたり、ひっくり返すと下部はシンプルでペタッとした平面で構成されていたり。発見が色々あります。

採用テストのライバルであったF-22は2005年から正式採用され、今も世界各国の空を守っている訳ですが その採用テストは1990年には行われていたようです。30年以上前に、当時として挑戦的な技術を結集して生み出された戦闘機であることが、このSFチックなデザインからも強く伝わってきます。

このキットは、普段目にすることの少ない試作戦闘機を、スッキリとした組み立てで味わうことができます。今回は組んだだけですが、試作機という背景を生かして、アニメのように自由なカラーリングするのもアリ!試作機にこそ刻まれた先人たちの“挑戦”を、プラモデルだからこそダイレクトに感じることができます。ぜひあなたも手の中に感じてください!