
HIPHOPには「レペゼン」という概念がある。もとは「代表する」という意味の英語「represent」からきているが、日本においては多くの場合「地元」という言葉と結びつく。自分の住んでいる街の物語や情景について歌うのがHIPHOPにおける、ひとつのお決まり。日本でいわれ始めて20年以上は経つけど、最近のMCバトルでもときおり争点になるほどで、この考え方はすっかり定着したといえるだろう。
中学生の頃にHIPHOPを聴き始め、レペゼンの意味を知った当時の私は、自分の住んでいる場所に対して「特に何もないな」という感想しか抱けなかった。せいぜい「交通の便が良い」程度の認識しかなかった。その程度しか街を見ていなかったのだ。

街の見方が変わったのは、車のプラモデルを作ってからだ。一台作ると、途端に道路に走っている車が気になりだす。珍しい車に遭遇するのが楽しくなる。感動のほとんどは「プラモデルで見た」というようなもので、それが今住んでいる街はとにかく多く「これがレペゼンだ!」と妙に納得したし、気づいたときは念願叶ったと言わんばかりに嬉しかった。
先日も、少し歩いたところにあるスーパーにトヨタの1600GTが停まっていて驚いて、そのままハセガワの1/24 トヨタ セリカ LB 1600GTを買ってしまった。箱を開けて作ってみると、シャーシやインテリアはパーツ数が少なく形になるのも早くて嬉しい。見かけた実車はもっと使い込まれた雰囲気に溢れていたような……と実車とプラモデルの違いを味わっていると「これはプラモっぽいぞ!」というパーツを見つけた。

ボディとシャーシを繋ぐためのアタッチメントになる小さな板状のもので、上下がわかりやすいように矢印が書かれている。こういうところに実物とプラモデルの超えられないギャップがあることを味合わされるし、だからこそどっちも面白いのだと感じた。

見かけた車を作ることも、作った車を見かけることもどっちも楽しくて、それは車のプラモデルを介して起こりうる日常の発見だ。それによって私は街の見方が増え、今回はプラモデルの車だからこその面白さに気づけた。このあとは気合いの入ったボディを作っていくことになるけど、それよりも板状のパーツが明確な実物との差異であり、実車とプラモデルを分かつものとしてあまりにも象徴的すぎて思わず笑顔になったのだった。