「“Ninja” 誕生の原点、欧州仕様を忠実再現」と謳うハセガワの新キットだが、用意されているナンバープレートのデカールは日本仕様のみである。1984年に欧米向けのスペシャル設計でKawasakiが臨んだGPZ900Rは、長らく国内で販売されることはなかった。映画『トップガン』(1986年)でテイクオフするF-14と並走するGPZ900R、米国名“Ninja”に脳を焼かれた内燃機関愛好家らが手にすることができたのは非公式の逆輸入車のみ。当時、そのハードルを乗り越えてトム・クルーズになれたライダーは「あー! トップガンのバイクー!」と羨望の声を浴びたことだろう。そんなアコガレの逆輸入“Ninja”の新キットに触れた。

箱を開けると緻密なディテールで再現されたパーツがみっちり。ハセガワの自動車、バイクのスケールモデルといえば模型愛好家に向けた、緻密な決定版的キットが多い印象がある。このキットはプラ成形色が白、黒、グレーにメッキとクリアと思っていたよりも色鮮やか。気が楽になる。パーツの分割は塗り分けしやすいようにみえた。ただ、細かすぎるパーツを相手するのに難儀するシーンも。ブレーキキャリパーのホースジョイントが別体になっていたりと、そんなゴマ粒以下の極小パーツをつまむのには『はじピン』などの調子の良いピンセットが必須だった。

細かいパーツもあるけれども、パーツひとつひとつの造形にはメーカーのこだわりが伺える。ブレーキディスクの穴が貫通しているのには目を見張ったが、このクリアパーツで用意された冷却水のリザーバータンクにもグッときた。これには塗装する意欲を駆り立てられる。タンクケースを乳白色にしつつも冷却水のグリーンが透けて見えるようにと、ちょっと塗装を頑張りたくなるな。

欧米のユーザーに的を絞り、様々な新機軸を盛り込んだGPZ900R。その代表がエンジンの水冷化だ。空冷エンジンがまだまだ主体のなかで量産機を水冷化するには、当時のKawasakiにとって大きな挑戦だったといえる。キットでは水冷エンジンのアイコンといえるラジエーターの再現にも大変力が入っていた。メッシュ越しの冷却フィンがしっかりと彫刻されているうえ、組むと完全に見えなくなる電動ファンの再現もバッチリである。

「GPZ900R = Kawasaki “Ninja” の決定版プラモをつくろう!」というメーカーの意気込みが随所に見られるなかで、このチェーンの表現にはそれが極まっていた。他社にも見られる二枚合わせのパーツ構成なのだが、ブッシュが互い違いに組み合わさり、スプロケットの歯が噛み合う部位にはしっかりと抜けが設けられていて向こう側が見通せる。いや。凄い。語彙が消失した。

決定版プラモだけあってカジュアルにサクッと組めるとはいえない本キット。説明書の読み解きだけでもなかなかの厳しさがあった。プラパーツは通常の接着剤と流し込み接着剤を使い分けて貼り合わせていき、ホースやメッキパーツは瞬間接着剤で取り付けていくのが良いだろう。前述したピンセットの用意も必須だ。それでも塗装や加工を加え、より緻密な模型に仕上げたいという欲が掻き立てられる。ただ、プラ成形色で部位ごとのメリハリが生まれているので、カウルだけ塗装してゴールしても充分な仕上がりになると思う。カウルの塗り分けにはマスキングの型紙が説明書に用意されているのがありがたい。

時代背景的には以後、スーパースポーツやレーサーレプリカの登場によって特異なコンセプトが際立つことになったKawasaki “Ninja”。それでも突き抜けたキャラクター性があったゆえ、ハリウッド映画の舞台装置として主演と肩を並べたといっても過言ではないだろう。無塗装であってもそのシルエットを存分に味わえるのでこの機会に是非。この機会にトップガンを観なおしたのだけれども、Ninjaがデートカーならぬデートバイクになっていて心底震えた。ヤング時代のおトム様のセクシー、まじパネェな……。