
神を造るにはまず「信仰させる装置」が必要だ。東照大権現a.k.a徳川家康を祭り上げる為のまさにそれである日光東照宮の顔、陽明門。そこに注ぎ込まれた人の業、職人の業を卓上でドカンと味わえてしまうのが、フジミ模型のプラモデル、「1/80陽明門」だ。

緻密な彫刻の数々と荘厳な建築美を、遍く人が組み立てられるように分割・造形されたプラスチックを重ねる工程は、まさに観光旅行。交通渋滞のように面倒な点もあるが、道中の景色も最高で良い旅になるはずだ。
後光のように美しい垂木の造形。嘘のようにワンパーツで成形された桝組。それらが驚くほど輝いている。なぜなんだ。塗装されているのかと思ってランナーを削ってみると、ラメの入ったキラキラした削りカスが出てくるだけ。まさかの成形色の輝き!仏倫仏倫(ブリンブリン)だ。

壁パーツの「彫刻の彫刻」が精緻すぎる。実物の彫刻を完全にトレースしている訳ではないが、面積あたりのディテール密度でいえば、プラモデルがホンモノに勝っているだろう。

屋根もバカっと大きなパーツで成形されていて気持ちがいい。瓦1枚1枚のディテールまでは再現されていないものの、見事な成形色と光沢も相まって曲線美が堪能できる。

組み立ては全て接着式で、カッチリ組み合わさる部分と、ファジーな噛み合わせが半々という印象。粘度の高いタミヤセメントで調整しながら組み立てるのが最適でしょう。唐獅子や龍馬といった神獣ヘッドの細かいパーツを切り出し、口の中のゲート跡をナイフで処理し、枡組の先端に合計88個も接着するのはある種の修行だが、その見返りとしてディテール天国へ行ける。壮観だ。

そんな各神獣の造形は大胆に省略されていて、その解説として「実際のディテール」が説明書にイラストとして掲載されている。……実際!?かどうかはアレだが、ゆるキャラみたいで可愛い。説明書は全編手書きのイラストで、ちょっとした解説や建築資材の名称も細やかに載っており、眺めるだけで楽しい。

屋根の妻側は複数のラインを貼り合わせるのにそこそこ神経を使う。説明書を先読みして、金の垂木の上に屋根を乗せ、仮組みしながら作るとうまくいくと思う。4隅に細い風鐸を接着でぶら下げ、軒の正面に勅額を慎重に貼り付けるといよいよ完成間近。黒と金の重厚なディテールのサンドイッチは見応えたっぷりだ。

精緻で美麗な彫刻のパーツと、うねりのある豪快で大判なパーツと、適度にざっくりしたパーツが織りなす組み立て体験は独特で面白いものだった。最期に、豪華絢爛な各階層をガチョンガチョンと積み重ねていき屋根を乗せる瞬間は、天下統一しなくとも神になったような気分で最高になれる。八州の鎮守となろう。