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今だからより心震える「ハセガワ 90年代F1マシンプラモデル」/ハセガワ 1/24 ティレル 021 1993 日本グランプリ

 レースチームのガレージに突撃し寝泊まり、がむしゃらに働いてフォーミュラーカーを駆る……その経歴からして神風、片山右京。F1にたどり着いた2年目の彼が乗ったのが、このティレル021でした。

 ティレル021。1993年後半に待望の登場となり、ヤマハが、右京が、そして名門ティレルが……と再起が期待されたマシンでした。しかし成績はさんざんなもの。そうです、迷車です。ハセガワのプラモデルで、その特徴がわかるのです。

 ティレルは1990年、それまで地面にめり込むように鋭くとがっていたF1マシンのノーズを、高い位置にあげるという新しいマシンをデザインしました。付属するウイングは地面に近くないと意味がないので、ノーズへの付け根がぐいっと曲がっています。これが革新的アイデアで、その後のF1マシンが皆ノーズを高い位置にする、という流れを作りました。

 名門ティレルはここから復活……とはいかず、いろいろあって91年のデザイン、020というマシンが少しずつ改良をしながら93年の前半まで引っ張って使われる、という苦しい状況でした(とはいえ、現在と違いトップチーム以外は1年半ぐらい同じマシンを使うこともままあったことではあります。)。だから021がどれだけ待望だったかわかりますよね。ノーズもツルンと丸みを帯びて、この流麗なラインがいかにも時代感あって好きでした。

 後ろのギアケーシングの蓋をスライドさせてかぶせて、スライドで空いた穴にサスペンションをはめます。プラモデル的な構造で、これは楽しい……ってこれ! 後ろがモノショックじゃねえかこの野郎! これはサスペンションは通常片側ずつスプリングとダンパーがセットになって、右左でそれぞれ2本になるのが当たり前だったのですが、見ての通り1本で左右のサスペンションを担当しています。フロントでは1本化するとフロントウイングの位置が固定しやすい、さらに軽量化とマシンデザインがしやすい、というメリットが(マシンの安定性やや犠牲に)あったのですが……。

 これを後ろにも採用したらいいんじゃないのって選んだのが運の尽き。ふつう左右二本のサスペンションはリンクして、片側が縁石に当たれば反対側が踏ん張るという効果があるのですが、1本だと柔軟性が足りない(だからフロントだと動きづらいのでウイング位置が一定になって意味がある)ので、タイヤがきちんと接地できないという問題がありました。みんなの待望のニューマシンが、この後部モノショック構造でほとんどダメなマシンになってしまったんです。

 F1マシンのプラモデルは、おおよそエンジンまで再現します。ここが完成品と違うところで、この内装のドラマも一緒に味わうことになります。当時もいまもコンストラクター(メーカー)、エンジンという順で呼ぶわけで、ティレル・ヤマハの物語を指先から知るわけです。……実車の命運を決めた奇抜なアイディアも。

 F1マシンはタミヤを中心に1/20、他のメーカーも1/24で製品化してが並立し、たくさんのキットが発売されました。それぞれの良さがありますが、1/24スケールのよさは他のカーモデルと並べることができることでしょう。直接的に他のカーモデルと並べるとF1が現実のクルマに対して異形の姿をしていることを実感できます。ジムニーは車高が高い方ですけど、F1は低すぎる。尻の下が地面。

 ハセガワは1990年前後の黄金期では1/24スケールでF1やフォーミュラ系マシンのプラモデルを発売していて、それがけっこうな名車/迷車を発売しています。そのなかには1989年に鈴木亜久里が全戦予選落ちを喫したザクスピード891、そして1990年に奇跡の3位表彰台を獲得したエスポ・ラルースLC90、こうした日本人パイロットのF1の歴史があり、その延長線上にこの片山右京のF1マシンのプラモデルがあるわけですね。さらにF1の下カテゴリーのF3000のキットが発売されていて、最近ではよく再販されています。このトップ下のカテゴリーまで製品になってしまうあたりが、どれだけブームだったかという証明でもあります。

 また他方ではハセガワが昔からちゃんとプラモデルのトレンドにキャッチアップしていた、という部分でもあります。いま同じように1990年前後のクルマをよく立体化しているハセガワですが、あのころはモータースポーツにお熱だったわけで……。結果的にティレル021も泣ける名車のなかに入れてもらえるんじゃないでしょうか……ちょっとダンパーは足りないけどさ。

けんたろうのプロフィール

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

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