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秩序のある静謐な時間をくれるプラモデル/ファインモールドの1:48零戦 レビュー!

 リベットバリバリ、機体表面のパネルの段差もクッキリとしたこの主翼下面パーツを見ていると、「ああ、本当にファインモールドが1/48の零戦を作ったんだなぁ」という感慨があります。正直ワタクシ、古今東西の零戦のプラモデルよりも値段が張ること、ハコを開けたときのパーツのボリュームがけっこうすごいことに「これ、本当に作るかな……」と少したじろいでしまったのです。が、それは完全に杞憂でした。

 こまかい表現をするためにパーツがバラバラになっていて全体像が全く見えないプラモデルって、どうしてもユーザーの腰が重くなります。カタチがある程度予見できるけど、それがどんな工程なのかワクワクするようなパーツのカタチや配置があると、「これ、組んだらどうなるんだろう……」という思いが手を動かす原動力になります。たとえばこんなふうに、コクピット周りの胴体がワンパーツになっていたら。

 コクピットの中身は内部の桁と補機類がある程度一体化したパーツに小さな部品を取り付けていく構成になっています。よく切れるニッパーと先のよく効くピンセット、それから流し込みタイプの接着剤とトロトロタイプの接着剤の使い分けが必要です。でも、反対に言えばそれだけです。説明書をよく見て、パーツを慎重に切り出してそっと組み付けていけば、必ずカタチになります。

 コクピットというのがバスタブのような箱の中に椅子を設けた部屋ではなく、フレームにぶら下げられた椅子とそこから手が届く範囲にさまざまな計器やレバーが配置された、あくまでも機能優先の空間にすぎないことがよくわかります。パーツ分割がとても的確なので、カタチと機能が同時に目に飛び込んでくるような楽しい時間が続きます。パーツ数が多くても、「これは何をさせられているんだろう……」と思うことはありません。

 下の写真は昔作ったハセガワ製1/32スケールの零戦ですが、ファインモールドの零戦のほうが小さいサイズであるにもかかわらず、より立体感があってひとつひとつのパーツに陰影がクッキリ出ていることがわかるはずです。もちろんハセガワ製の零戦は「パーツ数を極力抑える」というコンセプトで設計されたものですが、しかし「ひとつのパーツに情報量をもっと詰め込めるんだな!」という新鮮な驚きがファインモールドの零戦を組んでいてそこかしこに感じられました。

 エンジンは1/48モデルとして突出したパーツ数ではありません。しかしこちらも「我々は零戦のことを研究し尽くしました」と(どこにも書いていないのに)我々に語りかけてくるような質感があります。パーツの精度も高く、二層に重なる星型のシリンダーブロックとそれにまとわりつく排気管もビシッとキレイに組み上げられるのが素晴らしい!

 組み立ての様子をより具体的に理解したい場合は、説明書に記載されたQRコードをスマホで読み取ると動画で観られます。塗装の手順や使用する塗料についてもファインモールドらしく懇切丁寧に(しかも極めて上質な紙に!)印刷されていますので、「パーツは用意しておいたから、あとは君が自分で考えて工作と塗装の順番を考えてくれたまえ!」という古来のプラモデルとはまったく違う体験ができます。

 本キットの大きな特徴として各所に取り上げられている「フレームと透明部分が別パーツになった風防」は、確かに高い精度で実現しています。とはいえ通常のプラモデルのパーツと比較すればきわめて繊細な部品なので、少しでも手荒に扱うと破損や汚損につながります。フレームにしっかりと透明パーツがハマっているか、ごく少量の接着剤がどこに塗られていればいいのかを確認するには倍率の高い拡大鏡でしっかりと見極めることをオススメします。

 なんだかシビアな言葉も並びましたが、この零戦は正月休みに秩序のある静かで美しい時間をもたらしてくれました。然るべきところに、然るべきパーツが、然るべき角度でぴしっと収まっていく。プラモデルって本来そういうものでしょう?と思う人にこそ、このキットを組んでもらいたい。パーツの多さを感じさせない構成とか、できあがっていくスピードの緩急とか、それを貫く彫刻の説得力や緻密さは、正直ほかのどんなプラモデルとも似ていないと感じさせるだけのユニークネスを持っています。

 カンタンお手軽なプラモデルでは決してありません。しかし気難しくてやりたいことができないような乱雑さはどこにもありません。胴体の前後半部をキレイにつなぐのに少しだけ気を使いましたが、それ以外は惚れ惚れするような瞬間の連続です。そしてなにより、このキットの迫力は塗装しなくても充分に感じられます。ひたすらに訪れる接着の愉悦に身を任せ、こんどの休みにじっくりと取り組んでください。1日あれば、きっとステキな零戦が机上に舞い降りるはずです。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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