

2008年、艦船模型のクオリティを一気に引き上げた事件的艦船模型が爆誕します。それがこの「フジミ 特23 日本海軍高速戦艦「金剛」」です。長い艦船模型の歴史の中でも、金剛前/金剛後という一つの区切りを作れるほどのプラモデルです。組んだだけで、この金剛前の艦船模型では味わえなかった緻密な世界を楽しめるようになったのです。

2008年当時は、1/350スケール艦船模型ブームの真っ只中(1/350スケールは非常に大きな艦船模型で、ガンプラでいうパーフェクトグレードのようなものが多いです)。フジミが突如として1/700で戦艦金剛を発売する、というニュースが駆け巡りました。
フジミは直前にウォーターラインの一角、アオシマと1/350で熾烈な金剛型バトルを繰り広げたこともあり、そのあたりの筋肉はムキムキ。1/350スケールで鍛え上げた後に発売される”金剛”ということもあり、ファンは大きな期待を持って本キットを迎え入れたのです。

金剛型という船は4隻あり、それぞれに細かな違いがあります。フジミはそれらの差異を1/350スケールでチャレンジしてきました。そのチャレンジが本キットでも行われているのです。
金剛はイギリスで建造され、1913年に竣工した超ド級戦艦です。これを日本でも作ることで、超ド級の戦艦建造の経験を積むこととなったのですが、イギリス含め4個所で建造、そして1941年までにかなりの改修を経たので、4隻の個艦ちがいが各部分に生まれた艦船でした。一例は後部にあるリノリウム貼りの航空甲板で、みなそれぞれに違う形状をしています。こういった細かい違いが各艦にあり、金剛型戦艦は、コレクションのためにある程度パーツを整理してしまうとどうしても追いきれない妥協部分が発生してしまうものだったのです。

それをフジミは1/350で差異をしっかり再現してきたからこそ、ちゃんとほぼ専用のパーツで構築したキットとして1/700スケールでも表現してきました。まだ金剛しか発売していない段階で、金剛型のファンならパーツ分割からどこまでフジミが本気なのかをすぐに理解したのです。

1944年の姿なので、対空兵装をたくさん搭載した姿になります(太平洋戦争後半になると、航空機対策として多数の機銃が装備されました)。甲板には機銃配置用の穴がすでにあり、近くには弾薬箱のモールドも。開戦時の1941年仕様を考えず、脇目も振らず金剛の最後の姿を作るところも、フジミの覚悟の見えるところでした。

艦橋の組み立てでは、内部床面に微細な彫刻もあり、リノリウムなのか鉄甲板なのかがよくわかります。積み上げる前からパーツの濃さと内部をイメージさせる構造で盛り上がります。

中央の柱に支柱が集結する楼構造にくわえて、左の後部で背骨のようにさらに構造物が支えてくる。金剛の構造が組みながらよくわかるところ、楽しいですよね。

細かいパーツをピンセットでトライブしながら、煙突と構造物を積み上げて、装備をつけていきます。あとは艦橋をつければ船体は完成というところです。本当に細かい動線が見えてくるような密度、お見事。

さあ、金剛の完成です。精密化新時代の旗手となったキットですが、比較的組みやすく、ピンセットがあればじゅうぶん作れるシンプルさです。

金剛、この後ろから眺める細長いシルエットが好きなんですよね。金剛型は4隻異なる部分が多い、と書きましたがフジミはこのあとその違いを再現したキットを発売していきました。霧島、榛名、比叡と揃えると、その違いが鮮明にわかって、これまたマニア的おもしろさに溢れているんです。

大正生まれの細くスマートな船体、昭和にこれでもかと強化した艦橋、そして対空兵装……。行き着いた戦艦の姿がたまらなく愛おしい金剛。フジミはウォーターラインシリーズ(タミヤ、ハセガワ、アオシマ、フジミの4社が共同でスタートした艦船模型シリーズ。後にフジミは脱退し、現在の3社体制となります)の一員として金剛を発売していたこともあって、1/350ではバトルを繰り広げ、ついに1/700で帰還を果たしました。いにしえから金剛はうちが担ってきたんだ――。そういった矜持あふれる戦艦金剛は、艦船模型ファンにとってもまさに事件でした。このプラモデルから、フジミの1/700艦船模型大進撃がはじまったのです。