

「本物の戦闘機を見たことがあるか?」と聞かれると、私は少し戸惑う。私はガンプラなどのキャラクターモデルを中心に作っていた時期があった。だから実物を見ることはなく、そもそも存在しないのだ。しかしスケールモデルは違う。これらはかつて実際に存在していた(あるいは現存する)モチーフをもとに立体化されたものだ。つまりそのプラモデルの“オリジナル”がどこかにあるのだ。そう考えると、私はプラモデルでしか戦闘機を知らず、本物を見たことがないのだと気づく。でも、実物を見なくてもプラモデル作りには問題はない。そう思っていた。

せっかく海外にいるから、日本では見られない戦車や戦闘機を見ておこう。そう考えながら旅程を組み、西海岸最大の航空博物館があるシアトルに行くことにした。バンクーバーからは陸路で国境を越えて4時間半の距離だ。期待に胸をふくらませ、いざシアトル航空博物館へ。

長時間バスに揺られ続けて到着した博物館は、巨大なハンガーそのものだった。展示されている航空機は200機近くもあるという。圧倒的なスケールに期待が高まる。ハンガー内には、床に置かれた戦闘機だけでなく、吊り下げられた飛行機までずらりと並んでいる。プラモデルの箱絵でしか見たことのない機体が、実際に目の前にある。「本当に動いていたんだ…」と胸に訴えるものがあった。生まれる前には既に博物館にいた飛行機たちが、こうして実在していたことを実感する。昔作ったF-4 “ファントムII”や一式戦闘機 “隼”も、実物を前にすると情報量の違いに圧倒される。

最近はAFVのプラモデルを中心に購入しているので、飛行機のモデルとは少し疎遠だった。だが、バンクーバーで出会ったモデラー仲間から「よかったら」と渡されたのがLTDモデルのYak-9だった。少しは戦闘機プラモを作った経験はあるものの、知らないメーカー、微妙に知らない機体、難易度の高そうな内容に気おくれしていた。でもせっかくなので、日本に帰る前に作りたいと思っていたのだ。

博物館には、運命のようにYak-9も展示されていた。本物を見てからプラモデルを作るなんて、今までにない体験だ。今まではプラモデルで知識を得て終わりだったが、今回はその逆だ。これがスケールモデルの本質なのかもしれない。本物が持つ圧倒的な情報量と歴史に突き動かされた気がした。