

「全く同じS.A.S.ジープは2つとしてなかったことに注意してください」
説明書を開いてすぐ目に入る <作る前にお読みください> にはそんなことが書いてある。ここの文章には「説明図は軽装備タイプになっているが、カットや写真を参考にぜひ重装備タイプも作ってください」と、作り手に挑戦してほしい気持ちをはっきりと示してくれている。
タミヤ 1/35 イギリス S.A.S.ジープはこの <作る前にお読みください> を読むだけでゾクゾクする。同じものはない、説明図以外の姿を作るのも楽しいと教えてくれるし、最後にはSASの兵士になったつもりで作ることもきっと楽しいことだとも書いてある。

S.A.Sジープの組み立てはあっという間に終わる。車内のほとんどが一体成形で作られているからだ。背もたれを差し込めばあっという間に出来上がる座席はとくにシンプルで作りやすいと思った。そしてここからびっくりするくらいの量の荷物を作ることになる。
無数に作るジェリカン(携行燃料缶)は「そんなに積む必要があるのか」と驚かされるほどの数だ。ただ、これをすべて使い切るまで砂漠を駆け抜けるのかと思うと、過酷な任務が想像できる。ジェリカンをどれだけ積載するかによってどれだけの距離を走るのかを演出することもできる……とあれば、自分だけのS.A.Sジープづくりは荷物をどう積むのかがカギだということがわかる。説明書には、どのパーツがどんなものなのかが書いてあるので、パッキングするような感覚で荷物を積んで行く楽しさがある。

参考にしようと説明書の写真をじっくり見ると、復水器がベコベコに凹んでいたりバンパーが歪んでいることに気づく。使い込まれた車体を眺めながら、ふと視線を下に移すと「1942年7月26日の夜、月はこうこうと滑走路を照らし出していた」という、実車の説明とは思えない小説のような書き出しからのテキストが始まる。この文章がとにかく面白くて、読んでいて楽しいのだ。
タミヤ 1/35 イギリス S.A.S.ジープは、プラモデルは作る楽しみだけではなく、箱の中には色々な楽しさが入っているんだということを改めて私に教えてくれた。こんな商品が1974年から50年間も世の中に出回って、今日も誰かに作られていると思うと驚きを隠せない。