とにかくこの『This is HONDA』を観てほしい。これほど「工業」がセクシーに抽出された映像は観たことがありません。加えて、この1962年制作の記録映画には今では想像がつかない高度成長期の勢いも描かれています。そりゃ、この時期だけで所得が倍増するわな……と深く納得しました。
劇中のカメラワークにもいえるのですが、効果音が円谷プロの特撮のそれで、本田技研が秘密結社に見えてくるのが面白いポイント。ただ、円谷プロが興る以前の作品であり、製作は日映科学というところ。なのでこのメチャ格好良い演出にも当時性が含まれているわけで、日本の’60年代に思いを馳せる機会となりました。

世界のHONDAの物語は本田宗一郎の物語であり、スーパーカブの物語とも言えます。先の記録映画の冒頭、山を切り開いたばかりの跡が生々しい鈴鹿サーキット、そのコースにあふれるスーパーカブは圧巻です。スーパーカブが誕生してから5年目となる1962年、空前絶後の世界的大ヒットに応じるべく鈴鹿製作所が新設され、国内はもとより海外へとシッピングされるところで映画は締めくくられています。以後、スーパーカブが海外における販売と製造の礎になった歴史を鑑みれば、この映像作品はHONDA物語におけるプロローグともいえるでしょう。

本田技研が探求し、高めた技術と独自の発想で実現した工業の結晶、それがスーパーカブ。ああ…… スーパーカブのプラモ、メッチャつくりたい。できたら「翼の形のプレス・ハンドル」を有する初代スーパーカブのプラモを作りたい。そんな思いをフジミ模型がしっかり受け止めてくれました。箱を開けるとメインのランナーがグレー単色。まるでミリタリーミニチュア。塗装を考えずにいくなら流し込み接着剤(速乾)でバシバシ組んでいけるカジュアルなキットです。

ホースやワイヤー類が省略されていたりとスーパーカブのコンセプトと同じく手軽さのあるキットですが、説明書にはディテールについての補足と解説が記されています。その都度、実車とパーツの解像度があがっていくので満足度は最高。軽く小さく、そして力は大きく、しかも堅牢かつ美しい。初代スーパーカブに込められ、そして今なお変わらぬ思想を体験できるプラモデルです。

グレー単色で組み上げたフジミの初代スーパーカブ。単色だからこそハッキリと見えてくるプレス加工主体の独自のフォルムがあります。キットの箱がミニチュアになるという面白いオマケもあったので女の子プラモと合わせて添えてみました。
そう、初代スーパーカブは広告にも斬新なアイデアが注ぎ込まれた歴史があります。なかでも女性誌にオートバイの広告を掲載するという前代未聞の挑戦があり、それは当時のフェミニズムの先駆となったそうです。その広告のコンセプトは北米市場でも生かされ、ブームの一翼を担った。そんな数々のスーパーカブの物語がHONDA公式WEBサイトにてみっちりと綴られています。是非。

本田技研の技術の結晶であるスーパーカブは、機械工業の普遍的な価値を示し続ける存在なのかもしれない。うーん、1/1(実車)も欲しくなってきたぞ。しかも今なお新車で買えてしまうという。まさに機械の普遍性のシンボルと言えるのです!
■Cub Stories|HISTORY|Cub|Honda
https://global.honda/jp/Cub/history/stories/