

数年前のある日のことだ。「靴の話なんだけど……」とよその店舗のスタッフが私に相談してきた。なんのことかと思ったら、とあるブーツメーカーはオーダーの際にサイズが大きくなると値段が上がるのか? という話。
彼は平均的な足のサイズだったので履いている靴を指差して「その大きさなら問題ないだろう」と話をした。すると「俺はコレクション用の靴はその靴の最大サイズのものを買うと決めているんだ」と想像もしなかったコレクション方法をとっていることを急に彼は話し出したのだ。

度肝を抜かれた私は、相談された側にもかかわらず、たくさん質問をした。そうするとスニーカーは日本で展開していないサイズもあるので海外のサイトもチェックすることや、カッコ良くて巨大な靴がドーンと部屋にあることは、履けるかどうかよりもはるかに大事なことだと教えてくれた。そして「置き場は?」と聞くと「そんなことは後で考えて、とにかく買う」とキッパリと教えてくれた。履けない靴を、飾るために買うのだという、彼の振り切った姿は、とてもカッコよかった。
タミヤの1/35ヤークトタイガーははっきり言ってデカい。もとの戦車が大きいのだから、当たり前といえば当たり前だ。その大きさのせいで置き場がないな……と思っていて、買うかは大分悩んだ。ただ、その大きさに尻込みしている間に思い出したのが「一番デカい靴を買うあの人」だった。そのおかげで、とりあえず今回は置く場所なんて後で考えて、まずは買ってみようと踏み切ることができた。

大きい車体のパーツに、長い砲身がつくと瞬く間に私が履いているブーツの大きさを超えてしまい巨大な塊になった。とりあえず……と部屋にドカッと置いてみたその姿は「デカい戦車、買って良かったな……」と思わせる堂々としたものだ。
ドイツ戦車の特長である千鳥に配置された転輪をシャーシに取り付けた後、みるみる形を変えながら一気に完成まで進む加速感がとても楽しいのがタミヤの1/35ヤークトタイガーだと思った。デカいサイズの靴を買うとわかることはまだわからないが、デカい戦車の楽しみを知った私は、また「大きいから」という理由で戦車のプラモデルを選ぶだろう。