

一年半前に、急に旅行がしたくなって仙台へ行った。歴史も観光名所もあまり詳しくなく、美味しいものが食べたいという感覚も自分にはあまりない。こうして旅の計画を考えようとすると、己の適正のなさにがっかりしたが、旅先で靴を作るという自分らしい目標を見つけた。良い感じの靴屋を見つけて連絡を取り、日程を調整し始めると、みるみる旅行の輪郭がはっきりしてきたのだった。
仙台に降り立つなり、靴屋へ足を運んで注文を済ませる。珍しい革を見せてもらったり好きな靴の話などをしたりと、随分と盛り上がったので思っていたよりも時間がかかった。宿のチェックインをかなり後ろ倒しにしてもらったことをよく覚えている。完成は一年半後とのことだった。そう、注文して取りに行くということで、もう一回旅の口実を得ることも狙っていたのだ。

次の日は帰りの新幹線まで時間が余っていたのでプラモデル屋を探してみたら、ムーンベースという店を見つけた。駅までのルートに組み込むことが可能だったので「靴以外にも旅行に行く理由が見つかったな」なんて思いながら、HUMA MODELL の1/72 フィーゼラー Fi 5R を購入した。聞いたことのないメーカーで、知らない形の飛行機は私には、ひときわ輝いて見えた。
先日ようやく箱を開けてみると、一枚のランナーと見逃してしまいそうな小さなクリアパーツが入っていた。Courierというコーディングで使われる書体で文字が打たれた説明書は、簡素だがカッコよく見えた。 作り始めると、ボディパーツはピンも穴もなく良い感じに合わせる設計で難しそうな気がしたが、パーツ同士がいい感じに合ったので作りやすかったし、良い意味でシンプルなディテールはパイロットの柔らかな造形とマッチしているように感じられ、とても良いプラモデルだ。

作っている間は、新幹線でトンネルをくぐるたびに雪景色になったり、そうでなくなったりという景色の変化に驚いたことや、傘を持って行かなかったので雨に塗られながら靴屋へ向かったことなどを思い出した。
このプラモデルを作り出した理由はつい先日靴が出来上がったから。「完成したら仙台に」という旅の口実は、注文してしばらく経った後に届いた「東京へ移転します」というメールで霧散していて「もう一度仙台へ行く理由がなくなった」と旅向きではない自分が顔を出していたのだが、プラモデルを作ることで蘇った旅の風景は「また行きたいな」と思わせるには十分なものだった。