

「これは完成するな!」という予感があったので途中まで組み、ずっと机の横においてあったタミヤのポルシェ935が、突然出来上がった。予感というのはボディカラーがもたらすもので、コバルトグリーンに塗るよう指示されているパーツは最初からことごとくコバルトグリーンのプラスチックだったから、これはもうガンプラを組むように、そのまま成形色(=プラスチックの色)を活かせばいいと思っていたのだ。

そもそもクルマ模型は作っていく過程でエンジンを組み室内を組み、どこがどんなカタチと色なのか否が応でも説明書とともに追いかけることになる。しかし街を走っているクルマを見かけて、内装がどんな色でエンジンがどんなカタチか私はほとんど意識しないように思う。
もちろんスペックが気になるクルマはエンジンも魅力的だし、自分が運転したり助手席で寛いだりするのなら内装の造りも気になる。しかし、第三者視点で眺めるクルマの印象は9割以上がボディのカタチと色。タミヤの935は内装のほとんどが黒いパーツになっていて、実物通りかどうかを置いておけば、うまいこと「脇役」になってくれる。塗装しないでそのまま組み立てたってバチは当たらない。

それまで全くと言っていいほど気にしていなかったのに、クルマの模型に親しむようになって突如その存在感を増したのがホイールだ。カタチ、色、メーカー、直径、幅……。走りはもちろん、クルマのスタイリングとカラーコーディネートに与えるホイールの影響はとてつもなく大きい。
メッキのスポークホイールは彫刻的な表現でも充分立体的。キットでは黒いホイールキャップを取り付けることになっているけど、合いがあまり良くない(だいぶ調整してもリムのツラにホイールキャップを収めるのが難しく、メッキ面に対しての接着も簡単ではない)ので、装着せずそのまま仕上げても良かったな、と思う。

エンジンなどの駆動系はシルバーのプラスチックだが、完成後は裏返さない限りまったく見えない。あとはボディパーツに世界最高品質と言って良いカルトグラフ社製のデカールを貼っていけばOKだ。寸法バッチリ、印刷の鮮明さバッチリ、曲面にも小さな凹凸にも柔軟に追従する素晴らしいデカールを貼っている時間はとてつもなく楽しい。自分で塗装しようと思ったらかなりのスキルを要求されるだろう鮮やかなストライプや可愛らしいウサギのマスコットもパリッと美しくキマる。
ところどころにあるコバルトグリーン以外の塗装指定は可能な限り塗り分けたが、難しいと感じるのはフロントエアダムの下半分を黄色く塗るところだけ。これも覚悟を決めてマスキングすれば大したことはない。
デカールを一晩乾燥させたらプレミアムトップコートの「光沢」をドバーッと吹いてツヤを出し、あとは細かなパーツをくっつけていけば完成(こまかなパーツはボディ裏から取付穴に少量の接着剤を流せる設計になっているのもだいぶありがたいと感じた)。いちばん面積が広いグリーンの塗装はいっさいせずとも、こんなにカッコいい935が目の前に現れる。

パーティングラインやヒケの処理、合わせ目の処理、クリアーコート後の研ぎ出しなどなど、なかば「プラモデル作りの常識」となっている作業は全くしていない。ただパーツを切って、極力プラスチックの色を活かしながら組み立てただけだ。
これは決して自慢じゃなく、「それでもこれくらいの見た目のものができるんですよ」という例を示すものであり、これを読んでいるアナタにも「じゃあ作ってみてもいいかな」と思ってもらえればこれ以上ない幸せである。その日、その時、できることだけやると決めれば、プラモデルはいつかどこかで必ず完成する。もっと素晴らしい出来栄えを求めるのなら、プラモデルはまたチャレンジできる。まずはひとつ、ゴールする勇気を!