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ド定番プラモデル、ハセガワ製F-15Cの「新しいほう」を改めて味わう話。

▲Photo by Alan Wilson

 F-15がおもしろい。たくさんのメーカーからプラモデルが発売されている。プラモデルとしては古いのも新しいのも、安いのもちょっと高いのも選び放題で、それぞれに違う特徴がある。組み比べることでメーカーごとの、時代ごとの解釈や技術も見えてくる。しかしそのカタチは万人を引き付ける強烈な個性があるわけじゃなくて、上の写真を観れば分かる通り、どうにもフラットな、無機質なカタチに感じる。翼が胴体の上面に付いているから、背中がほとんど真っ平らに見えるのが大きな理由かもしれない。

 ハセガワの1/72 F-15Cを買おうとすると、模型店の棚にはふたつのキットがある。ひとつは1974年に金型が作られたもの(品番はC6、安くて、パーツ数が少なくて、パネルラインは凸線の彫刻)、もうひとつは1988年に金型が作られたもの(品番はE13、少し値段が上がって、パーツ数はやや増えるけどシンプル、パネルラインは凹線の彫刻)だ。

 どちらのキットが優れているのか……なんてことを決められるなら、ハセガワがこのふたつを同時に棚に並べることはしないだろう。価格と仕上がりにそれぞれ特有のバランスがあるのは、たとえばひとくちに「HGUCのガンダム」と言っても複数のラインナップがあって、みんながそれぞれ好みで買っていくのと同じ。今回は「凹線の彫刻がいいな」と思ったのでE13の「新しいほう」を買ってきた。

 新しいとはいえ、36年前に開発されたプラモデルだ。どこもかしこも親切なノリシロが用意されているとか、塗り分けを考慮していい具合にパーツが分割されているといったおもてなしは受けられない。たとえば初めて作るプラモデルとしてこれを渡されたら、結構苦戦するだろう。説明書をよく読み、実際にパーツを組み込みながら「たぶんこの角度で貼るのが正解だな」というユーザーの読み取り力みたいなものが試される。

 とはいえ、自社の過去製品をリニューアルしようと考えられた設計は巧みだし、ひとつひとつのパーツの精度はキチンと出ている。組んだ印象としては「おお、ちゃんと合うように貼ればビシッと組み上がるな!」というもので、こちらの気遣いがそのまま仕上がりに反映するような、プラモとのコールアンドレスポンスがある。

 胴体上面のパーツと主翼の合わせ目がF-15のプラモデルを見る上で各社の工夫を感じるところだけど、素直に直線的な分割としていながらビシッと合うのにはちょっと感動した。「古いから合わない」みたいな先入観は捨てた方がいい。インテークの上面とサイドの膨らみの間に鋭く走るスキマはけっこう攻めた設計だけど、これも意図通りに機能してくれることに驚く。

 こうして飛行機のカタチらしくなってきたところでサイドから光を当てて眺めると、F-15の広い背中にもじつは豊かな表情があることにあらためて気付かされる。コクピットの後ろに伸びる尾根が尽きる前にふたつのエンジンに向かって立ち上がる膨らみ。もしかすると実機よりもちょっと大げさに味付けされているのかもしれないけど、この曲線美を見ると「やっぱりF-15ってカッコいいな」と惚れ直すのだ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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