太田垣康男が描くキャラクターは「人間」そのものでしかない。氏の代表作であるSF長編漫画『MOONLIGHT MILE』はリアルな人間描写があるからこそ、人の物語としての作品強度がとんでもなく高い。’80年代に勃興した「リアルロボットアニメ」はリアルな人間描写が軸にある物語だったからこそあの熱狂が今なお受け継がれているのかと。当時のブーム直撃世代である氏の漫画にはリアルロボット作品を突き詰めた魅力を感じていたし、後にガンダムやダグラムを描いていく事になるのも自然な流れでしかないと眺めていた。「俺の見たかったのはコレなんだよ…」と、メカデザインと合わせて両作品への氏の独自解釈には共感しかなかったのです。
太田垣康男自身のタフな作家性にも魅せられている。数年前の「腱鞘炎で休載」から、売りであった繊細な描写をあきらめての連載再開は衝撃でしかなかった。絵の簡素化に驚いたというよりも、その線に痛々しさを感じたのは初めての漫画体験だった。そしてハンデを負ってでも自身が紡いだ物語を完結させようとする姿勢にシビれたのです。それから5年ほどが経ち、作品が意欲的に展開されていくなかのひとつが『Get truth 太陽の牙ダグラム』なのである。しかもフルカラーでのコミックス化。いくつも連載を抱えての新作発表に、氏が代表を務めるスタジオ・トアが成熟した結果でしかないとグッときた。
この『太田垣版ダグラム』が立ち上がった経緯には、ホビーメーカーであるマックスファクトリーが深く関わっていること(Get truth 太陽の牙ダグラム 2巻 巻末対談より)もあり、漫画を愛し、プラモを愛しているファンとしてはスペシャルが過ぎる一件と言えるのです! 漫画読んで「カッケー!」となったメカが、速攻で抜群のフォルムでプラモになる喜びたるや! 主役メカであるダグラムに続き、ライバル機であるビッグフットがマックスファクトリーから発売ということで速攻で組み上げた今回です。結果、ダグラムよりひとまわり以上デカく、濃厚な太田垣メカ汁をより味わえる傑作キットでしかなかった言えます!デカいは正義!
ゴロッと大きめなパーツが多く、その構成も工夫されていて苦もなく抜群フォルムのビッグフットが立ち上がります。プラ成型色もキレイで差し色のピンクがド渋です。パチ組でも大満足なキットなんですが、太田垣氏mによるボックスアートを眺めていたら塗りたい欲がムクムク湧いてきました。で、いったん組んだのバラすのですが、パーツのハメ合いがキツくないので容易に塗装の準備が整いました。組んだのバラすのがシンドいと、塗る気が失せるのでナイス。
主人公のクリンとダグラムに復讐を誓う死神、ビッグフットを駆る『トラビス&アウラ』です。太田垣版ダグラムのオリジナルキャラクターで人間味描写が溢れる魅力的な二人。この作品を牽引する大きな要素になっています。この世界のロボットの頭はキャノピーなので表情がないとも言えます。それゆえ、パイロットを塗ることによって強い目力が得られるのが面白い。白サフ吹いてからクレオスの水性ホビーカラーでザックリと塗り分けてやるだけでグーンと情報量が増えてスゴく良くなる。
プラスチックの色を活かしながら水性ホビーカラーでワンポインを塗り足し、水性プレミアムトップコートでツヤ消しに。ボックスアートを参照にしてフィルタ・リキッドでパープルの風合いを調整しつつ、ウェザリングカラーとメイクアップ材で仕上げてゴール! 太田垣メカが箱から飛び出してきてライジング爆発です。工数を極力少なくで効果大。よし、いいぞ。
多くの人に『Get truth 太陽の牙ダグラム』を手にしながら太田垣メカを味わってほしい。願わくは氏のSF巨編『MOONLIGHT MILE』を読んでもらいたい。強烈なセクシャル表現があるのだが、それ込みで人の物語であると示される傑作です。合体シーンの迫力スゴくてチカパシなら泣いてしまうと思う。自分も久しぶりに読み直したら迫力スゴくて泣きそうになったね… 合体。ちゃんと正座して見届けてほしいな、合体。
「つくる」をテーマに、世間話をしています。