

ミニ四駆の40周年アニバーサリーのトリを飾るかのごとく発表された書籍『ミニ四駆パッケージアートコレクション』。ブーム直撃世代はもちろん、そうでない人たちにもオススメできる、ミニ四駆というコンテンツの人気に頼らない骨太な構成の本だと思う。
本書はアートコレクションの名前のとおり「たくさん絵が載っている本」と思って大丈夫。ハイクオリティな図版を眺めるだけでも楽しめてしまう。ただ広くオススメしたい理由はそれだけではなく、それは優れた編集によってとても良くできた「ミニ四駆の歴史」の本に仕上がっている点にある。
これまで紙媒体における「ミニ四駆の歴史記事」と言えば、社会現象にまでなった大きなブーム時のことを中心に、それ以外をサッとさらう程度にまとめられたものだった。今回出版されたこの本はそんな「ミニ四駆の歴史記事」に対する印象を一蹴してくれる。ブームが訪れる前のミニ四駆シリーズも、ブーム絶頂期の人気マシンも、ブーム後の低迷期も、全く同列の扱いで大きな図版で紹介してくれる。これまで大きく取り上げられることが無く、小さな図版で紹介されがちだったマシンも平等に、文字通りの「高解像度」で味わえる、まさしく「タミヤ公式」の名に恥じない全てのミニ四駆シリーズを網羅した構成となっているのだ。

写真パッケージ等の一部例外を除いて1車種に1ページを費やした贅沢なレイアウト。1台ごとに用意された紹介文はちょっとビックリするくらい多彩な視点で語られていて、見本写真に写っていないオマケについてや、マンガ由来ではないながらも登場キャラクターの愛車として使用されていたとか、「ちゃんと知っている人が何に触れるべきか吟味している様子」がうかがえて旧来からのファンならニヤリとしてしまう。それでいて変に熱くならない「製品史」として振り返る冷静さも保ったバランスも感じられ、リリース当時を知らなくても置いてきぼりにされたり、シラケたりすることなく読み進めることのできるフラットな面白さを提供してくれている。

カタログデータも詳細で特筆すべきは発売日の記載。年単位どころか何月何日にまで及び、それだけで「誕生日に買ってもらおうとねだったけれど、お店に並んでいなかったのはギリギリ発売前だったからなのか!」とか「イベント先行販売で買ったので短い間クラスのヒーローだった!」とか、個人のエピソードと紐づく強力なフックになるし、当時の世相と照らし合わせる際の精度も格段に上がる超一級の資料とさえいえる。
もう一つ注目なのが担当イラストレーターの記載。プラモデル箱画のイラストレーターにちょっと詳しいなら、ミリタリー専門だと思ってた人がこんなビビットな色使いのミニ四駆も描いていたんだ!と驚いたり、逆に、ずっと同じ人が描いていたのかと思ったら実はこんなにたくさんの人達がタッチを揃えて「ミニ四駆のビジュアル」を描いてきたんだ!と驚きを覚える人もいると思う。

面白いのは上巻も下巻もページを進めていくと「今現在、売り場で見れる現行商品」に行き着くところ。幾多もの「昔流行ったコンテンツのメモリアルブック」と一線を画すのは、40年を経た今も現在進行形で歴史が続いているからなのだ。
きっとすぐにこの本からこぼれた新マシンが登場する。連載中のマンガの新しい単行本が出たそばから未収録の最新話が続いていくように。

ノスタルジックな主観で物語を作ってしまうことなくあくまでも客観的に、淡々と記録を並べる態度をもって「タミヤ公式」を謳う。そこに「あの頃ミニ四駆ってこうでしたよね?」という同意を引いてポイントを稼ぐような媚びた仕草は一切ない。ただ淡々と重ねられてきた「良い仕事」の温度が感じられるのだ。タミヤに、ミニ四駆に、そして、この本に……。