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「恐竜世界」の作りかた/タミヤのティラノサウルス情景セット。

▲向かって左が1981年版、右が1993年版のティラノサウルス。どちらもタミヤ製のプラモデル。

 「1/35 恐竜世界シリーズ」はタミヤの恐竜プラモデルとしていわば2周目の存在で、10年以上溯る1周目「1/35 恐竜シリーズ」から劇的に変化している。並べてみると時代ごとの考証の変化に加え、ディティールや肉感といった立体表現そのものの進化も著しい。新しいシリーズ名をつけたのは同じシリーズ名で展開するには心苦しいまでの考証や造形変化からなのだろうと思ってしまうのだけど、違う、そうじゃない。復元の姿形の変化だけがこの二つのシリーズを分ける決定的な違いでは無いのだ。

▲紙巻線は金属なので、プラ用ニッパーとは別に金属対応のニッパーを用意しよう。

 恐竜本体の組み立てが終わった後も続きがあるのが「恐竜世界シリーズ」。恐竜だけでなく、添えらが暮らしていた世界まで表現しようというのだ。そうそう、ジオラマがついてくるのでしょう?「地面のカタチした板ね〜」などとスカした態度でいるといきなり「ソテツの組み立て」の説明が始まる。……ソテツとは?ああ、南国っぽい植物ね!恐竜のいる時代からあったんだ!「でもさ、結局部品切って貼ればいいんでしょ?」とまたスカした態度で構えていると再び面喰らうことになる。「紙巻線(紙の巻かれた金属線)を任意の長さに切って穴に通して瞬間接着剤で固めたら、ディティールを再現するために外周を三分割した幹の部品と接着してください」と来たもんだ!

▲クラフトピンセットがあるとこの手の「折り」作業がサクサク進む。
▲説明書では紙巻線のほうにボンド塗っているけど、折った葉の谷の部分に塗ると作業しやすいよ。
▲最後に床屋さんが髪を梳くようにハサミを入れて葉先をパラつかせます。

 そして説明書のページをめくると三たび面喰らうことになる。〈ソテツの葉の作り方〉である。金型で成形された具象的な部品を切り取って貼れば出来上がってしまうと思っていたプラモデルという枠組みの中に突如現れたマルチマテリアル!テクスチャの入った紙を切ってクセをつけて紙巻線に貼ってはみ出した分を切る!「参考に図鑑などを見てもよいでしょう」とまで書いてある!恐竜の世界どころか模型作りの視野まで急激に広がっていく……。

 このプラモデルの一番時間のかかる組み立てポイントであるソテツを作り終わったらもう安心……とも言えないのが白亜紀という弱肉強食の時代である。「パラサウロロフスの骨」の組み立て。こちらは難しくも面倒さを感じるほどのパーツ数でもないのだけれど、ここ最近続々とリリースされている「全身骨格のプラモデル」とは違って、今ここで組み立てるのは「屍として転がっている恐竜の骨」なのだ。つまり屍のプラモなのである。ついでに倒木も作っちゃう。コレだって考えようによっては「木の屍」だ…。弱肉強食を部品にするとこうなるのか……。

▲志村ー、うしろ、うしろー!

 そんな弱肉強食を生きぬいて最後まで組み立てると「恐竜世界」が完成する。漠然と古い物より出来の良くなったティラノサウルスが手に入るんだという気分でいたのだけど、タミヤが箱に詰め込んで来たのはまごうことなく「恐竜世界」だった。

 強い肉食恐竜であるティラノサウルスの足元に捕食される側の骨を散らし、朽ち果てた倒木と共に弱肉強食を演出する。それと無関係にソテツが生い茂る諸行無常の景色が広がる、盛者必衰の理を表して……なんて物語性(?)さえ見えてくる。なんとでも言えるといえばそうなのだけど、プラモデルは地面を掘って出てくるわけじゃない。開発を担当した人間が意思をもって送り出すモノだから。「恐竜世界」ってシリーズ名を背負わせると決めたときに、そんな詩情だって込めようとしていたんじゃないかと思えてくるよ。

HIROFUMIXのプロフィール

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

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