こんにちは、筒アニキです。下半身が筒になっちゃったよタハハ……ということで、イタレリから発売されている1/56スケールのパンターがめっちゃいいという話をします。1/35じゃなくて1/48じゃなくて1/56。これがいい大きさなんです。手のひらでむんずと掴めるサイズ。つまりこれ、机上でウォーゲームをやるのに使われるモデルなんですが、普通にプラモデルとして売られているんだからモデラーがプラモデルとして作ってもいいんですね。ということで作りましょう。リンク置いときます。
>ホビコレ イタレリ 1/56 WW.II ドイツ軍 Sd. Kfz. 171 パンターA型
はい、いい景色ですね。パーツは2枚の枠に収まっていて、これは勝ったも同然というか「なるほど、絶対完成させられる気がする!」となるじゃないですか。プラモデルというのは「全体像が予想できないほど細かいパーツが入っていて全然できる気がしない」と「箱開けた瞬間もうほとんどできているからオレがやることが残ってないじゃん」の間に気持ちいい塩梅があるという超贅沢な趣味です。このパンターは、「やることが適度に残っていますね!」というバナナのいちばん美味い状態みたいなプラモだと思いますねオレは。
だってほら、互い違いになった転輪が全部くっついた状態でひとつのパーツになってるわけですよ。ミニチュアを使ったゲームって、「ある程度リアルなカタチの立体物で遊びたいけどそのためのミニチュアを延々作っているとゲームができない」というジレンマを抱えているので、「爆速でカッコいいものができる」ということにいつだって本気でいろんな工夫をしている印象があります(シタデルカラーが速攻で発色して速攻で乾くのもそう!)。「こんなのリアルじゃないやい!」という人は、他のスケールに旅立てばホンモノどおり転輪を一枚ずつ貼っていくプラモがいくらでも売られていますからそちらをどうぞ。でもね、オレは知っている。こんな現実離れした造形でも、完成したらけっこうカッコよく見えてしまうことを……。
さらに履帯(=キャタピラ)も上と下がズバーっと一体になっていてこれをガッチャンコするだけでオッケーというきわめておおらかな雰囲気です。当然ながら金型の都合で車体の前後方向にあたる部分はディテールもへったくれもない感じになっていますが、ギリギリまで頑張っていますし天面のディテールは結構シャープで立体感もあります。いいんですよ1mくらい離れて眺めたら超かっこいいから。「こんなのリアルじゃないやい!」という(以下略)。
彫刻的な制約のない車体上面のディテールを御覧くださいよ。いいじゃないっすか。味濃いめの麺硬め。側面装甲には吸着地雷から身を守るためのギザギザ(ワッフルパターンのツィメリットコーティング)でアブラマシマシです。濃厚ですね。コンパクトに見える身体に濃い表情と強さを秘めた岡田准一みたいな彫刻です。みんなも『ファブル』を読もう。
砲塔とか車体後面にもコーティングのディテールが入っていて、ジャーマングレーのプラスチックのおかげで陰影が強いのなんの。概してゲート(ワクとパーツを繋ぐところ)の跡が組み立てに影響しがちな設計なので、組むときはデザインナイフでキレイに削いでから接着しましょう。ニッパー、カッター、流し込み系速乾タイプの接着剤があればモリモリ組めます。
足回りを組んだところ(このカタマリでたった5パーツですよ!)を一応お見せしますが、案外転輪に見えるし履帯に見えるでしょ。塗装して影になるところにビシッと暗い色を入れればより「別パーツ感」が出るし、そのへんは模型に自信ニキの腕の見せ所ってもんです。人間はこういう縛りがあるときのほうがいろんなアイディアが出るし工夫も映えるんだぜ。
1/35のヤークトパンターと比較すると、こんな感じのサイズ感。1/72だとサイズはお手頃でもフィギュアの造形に限界があったり、細部のパーツも小さくなりすぎて工作がかえって難しい……ということがままありますが、1/56なら小さすぎるパーツもほとんどないし、適度に一体化されているといろんな車輌をゴンゴン集めてカタチを楽しんだりいろんな塗装にチャレンジしたりと多様なアプローチにも優しく応えてくれます。なにより自分のモチベーションが終わる前に完成するいい湯加減がええのよ。
完成して写真を撮ればこれが大きいんだか小さいんだか判別する手がかりはほとんどなくなり、「え、なんかかっこいい戦車ができたじゃん」という印象だけが残ります。1/56の戦車模型はイタレリやルビコンモデルから大量に発売されていて、意外と広い世界が広がっています。見つけたらぜひとも手に入れて、その爽快な組み味を感じてください。そんじゃまた。
>ホビコレ イタレリ 1/56 WW.II ドイツ軍 Sd. Kfz. 171 パンターA型
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。