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「らしさ」を楽しむプラモデル。アメリカの記憶とタミヤのペガサスエンジン。

▲なんのイベントでもない。街の立体駐車場に行くだけで、ワクワクしちゃう車が普通に止まっている。それがアメリカだ!

 新橋のタミヤプラモデルファクトリーに行った時に、往年の名キット「1/48スケール シーハリアー FRS.1」と出会った。このプラモは「タミヤ 1/48 傑作機シリーズ」の第1弾である「ホーカーシドレーハリアー GR.Mk.1」を改修して発売されたプラモ。今や100作を超えるシリーズの源流に触れられるプラモなのだ。このキットの大トロと言えば、ペガサス・エンジン(飛行機の心臓ということでハツとも言える)。実際に箱を開けてそのパーツを見ると、アメリカのインディアナポリスにて見た実物の思い出が蘇る。

▲先ほどの駐車場からはインディアナポリスの景色が一望できる。アメリカの貨物の長さに度肝を抜かれ、「いつまで続くの〜〜」って叫んでいた
▲インディアナポリスのロールス・ロイス社のオフィスは、かつてアリソン・エンジンの本社だった場所にある。そのエントランスには数々のエンジンが展示されている。予約もなんもなしに、ふらりと入れてしまうすごい空間なのだ

 このエンジン。見るだけでなく、脇に置いてあるボタンを押すとノズルが稼働する。指先一つでペガサス・エンジンのノズルが上下に動く……こんな体験なかなかできるもんじゃない。ハリアーと言ったらこのノズルなのだ。そんなモチーフを自分の指先でバシバシ動かせる。アメリカの旅の中で一番童心に帰った瞬間であった。

▲フォークランド紛争が勃発した1982年に登場したキット。箱絵は、日本のプラモ史に輝く傑作とも言える

 エンジンというものは実物を見ると不思議な気持ちになる。得体の知れないパネルやスイッチ、コードがそこらじゅうにあり、色もカラフルなのだ。でもそれは「写真で見たとき」の話。実際に相対して見ると、なんかグレーというかメタルの塊にしか見えない感覚に襲われる。とてつもなくすごいパワーを秘めた金属の塊にしか、見えないのだ。これは僕だけの感覚かも知れない。でも、プラモの説明書を見ると、細部な塗り分けよりも大まかに金属色を指定して「らしさ」を提示しているものも多い。

▲ランナーの中に佇む心臓。古いキットだから、今のようなバキバキなディテールはないけど、雰囲気は十分
▲胴体にすっぽりとはまる。このアクションをランナーで楽しめたので満足。エンジンだけ塗って飾ろう
▲フラットアルミ、ガンメタル、クロームシルバー。まさに僕の目、脳内で見えているエンジンの雰囲気そのままのような指示がある

 指示通りの色で筆塗りして見る。プラスチックがどんどんメタルな塊に変貌していく。筆ムラも現地で見た経年変化したエンジンの雰囲気に思えてくる。どう塗っても楽しいという瞬間しかない。

▲メタリック塗料はムラが面白い。むしろ好きなムラができるように、筆を動かす方向を決めて塗っている
▲ペガサス・エンジンだけでもブンドドできる。うっすらとシーハリアーの外装がスタンドのように見えてくるッ!!

 さまざまな汚れが付着していたペガサス・エンジン。展示されていたものも、ピカピカじゃないからこそのかっこよさがあった。こう言った雰囲気を簡単にらしくできる塗料が今はたくさんあるから、模型ってのはさらに楽しいものになっている。タミヤのスミ入れ塗料 ダークブラウンを塗ってしまえば、僕とペガサス・エンジンの遊びは終了だ。

▲ダークブラウンは超優等生。塗ればなんでもかっこいい汚れ表現を纏える
▲全体に薄く塗ったら、エナメルと溶剤を染み込ませた綿棒で、余分を拭き取れば完成!
▲やったー!! 完成だ。今日のビールはうまい。エンジンと同じ1/48スケールの酒ニキも祝福してくれている

 旅の記憶、そこで見たイメージを模型にぶつけて楽しんだ1時間は格別だった。実物とはだいぶ違うけど、僕なりに「らしく」できた。そして、俺が作ったんだな〜と思える仕上がりにもなっている。そんな風に塗れたり、作れたりした模型ってのはどんなものでもカワイイもんだ。

 僕なりにできたタミヤのペガサス・エンジンを、旅の記憶と共に棚にそっと置いたのだった。おしまい。

フミテシのプロフィール

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

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