今回紹介するプラモ、つね矢の「1/30スケール 泉州だんじりDX(岸和田型)」はプラモですがプラモではありません。模型化された祭りの概念です。作るだけで祭りが始まります。始まってしまいます。
だんじり祭り(岸和田)とは毎年9月に挙行されるだんじり(山車)を神への奉納として町内を曳行して回るお祭りで、私も就職で大阪に来てから見に行きました。そんなだんじりがプラモになっているのを見つけたので即ゲット。なんでもプラモになってるなあ、という驚き、そして牧歌的な内容だったらどうしようという一抹の不安を胸に箱を開けてみると……予想以上に「いつものプラモ」で安心します。
カラー印刷の大判の説明書は本体の組み立てのみならず、だんじり祭の歴史や各部が適度にまとめられており読み物としても充実しています。歴史以外にも関西一円でだんじりが約800台あるとか、本体価格が一億円以上するものもあるとか、人に話したくなるトリビアが満載で読んでるうちに気分がノってきます。
ランナーを見ていくと小さいパーツはないものの分割数は多めです。これは各部の彫刻を詳細にインジェクションで再現するため各面に分割されているのと屋根や装飾をコンパチとしているからで、合計3タイプのだんじりが製作可能です。こういうところもメーカーの情熱を感じて好感がもてます。
川中島の一騎打ちや城郭などが深くモールドされているので眺めるだけでも発見があります。そんな茶色いプラパーツたちで本体を組み立てたら、最後に装飾の旗や幕、綱を取り付けます。この作業は金綱がよじれたりシールで再現された装飾幕や旗が皺にならないよう取り付けたりと、なじみのない作業なので気をつかう反面「あ、オレ本物の祭りの準備をしてるわ」という気分になります。これができたら完成。
しかし、ここから祭りが始まったのです!
何の気なしに完成しただんじりや提灯を模型棚に並べてみました。するとだんじりからにじみ出す祭りのオーラが周囲の模型を包み込み、いつもの模型もパレードのメンバーのように見えてきたのです!
モチーフとしてのお祭りとメーカーの情熱。だんじりプラモはこれらがブレンドされて置くだけで周囲の模型のありようを変えてしまう、なんともカーニバルなキットだったのでした。