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このガンプラのここがスゴい!/HGUCメッサーに見る「天才的な腹の分割」

 ガンプラは総じてとてもよくできている。よくできたもののレビューというのはとてもむずかしく、「組むとちゃんとしたガンダムになります」と書くしかない(たとえば「ここの色分けが設定と違う〜」とか「ここに合わせ目が出る〜」みたいなことを書く人はめっちゃたくさんいるので、わざわざ私が同じことを書く必要もない)。

 もっと言うと、サザビーだろうがZZガンダムだろうが、基本的にHGUCというフォーマットならパーツのカタチが違うけど組み立てる工程をよく見ればほとんど共通していると言っていい。このちゃんと平準化されたフォーマットがあるから設計も手堅く、組む方も迷わず楽しくカッチリと完成品が手に入れられる。すごいプロダクトだ。

 とはいえ、私もガンプラは買ってしまうのである。かっこいいし。『閃光のハサウェイ』、めっちゃ好きだし。メッサーはかなりデカい図体をうまいこと立体化していて偉い。「組む。案の定できる。やっぱ書くことないくらい普通で、ちゃんとカッコよく、それでいい……」くらいの気持ちで休日になんとなく箱を開けた。胸ブロックと、腹の上下ブロック。それぞれひねりや回転のための軸が入って上下に重なって胴体を形作る……というのもいつもどおりだ。しかし、上下に分割された腹を合体させる工程で私は仰天した。説明書を3度くらい見た。

 垂直に重なるだろう腹の上下パーツを、折れ曲がった位置関係で接続させられる。腰と接続する腹の下段にたいして、コクピットブロックがくっついた腹の上段が90度お辞儀した状態になっているのだ。これではマフティーも浮かばれない。「我がギャルセゾンの前に、障害物なし」といいたいところだが、このまま組んだら平身低頭のメッサーになってしまう。大丈夫か。

 次の工程で、なんと上体を起こすように(あるいは腹の下段をあるべき位置に戻すように)指示される。わーお、こういう体験がたまにあるから、プラモデルはおもしろい。上下に組み付ける設計では可動軸を置くスペースがなかったり、それを保持するための内部パーツを胴体の内側で受ける仕組みを考えたり、それによってパーツ数が増えたりと、設計する人も組み立てる人もやることが増える。

 どっこい、少ないパーツ数でも腹の真ん中でひねりを加えられるようにしながら、ちゃんと保持力をキープしようとすると、たしかにこの構造はクレバーだ(そして自分ではまず思いつかない!)。腹下段の後ろ側がギリギリのクリアランスで上段の内側に潜り込んでいくところなど、恍惚である。言ってることの意味がわからなければ、買って組むといいです。必ず「そう来たか!」と驚くはずだから。

 胸部を載せて、胴体が完成。このあとも快適なフライトで(いつもどおりのガンプラの組み味で)すらすらとメッサーの巨体が組み上がる。つや消しクリアーでトップコートすると、いかにもプラスチックっぽい光沢だった表面がしっとりと落ち着く。ついでに筆で足りない色をちょっとだけ補う余裕すらある。

 ひさびさにガンプラを組んで、トップコートして、色差しをして、なんだかすごく満足感のあるロボットモデルが目の前に出現した。ガンプラやっぱりすごいな……。そしてレビューをするなら、こんな意外な組み立てプロセスに驚きたいな、と改めて思う。カタチや色が再現されているのは(贅沢にも)当たり前、と思われているガンプラだからこそ、もっとじっくり見ないと気づかないこともある。

■使ったスプレー/GSIクレオス 水性プレミアムトップコート つや消し
■パイプ類の部分塗装に使った色/シタデルカラー アヴァーランド・サンセット
■バーニア類の部分塗装に使った色/タミヤ ラッカー塗料 LP-61 メタリックグレイ

<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>/nippper.com 編集長
からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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