馬に乗る人間、なんてカッコいいんだ。いや、馬に乗る人間じゃなくて人間と馬が一体になった姿というのはマジで美しく、「なるほどコレが『人馬一体』という意味なのか!」と心の底から思いました。『RRR』の話です。というかもう私は最近会う人会う人にRRRの話を延々し続けるヤバい人になっており、当然プラモも「これはRRRなのではないか?」となったらその場でビターンとお金を払うことにしています。ということで今日はそのものズバリ、ホースメンです。馬と人が一体になった単語で興奮できる日が来るなんて思ってなかったぜ。
いやお前、RRRはイギリス統治時代のインドの映画だろ。ノルマンディーを闊歩するアメリカの騎馬兵のプラモは関係ないだろ……というご意見はわかる。わかるんですが、私はいま当たり判定が極大化しているので「馬に乗ったイケメン」がすべてラーマに見える。模型の向こう側にインドの伝説を目の当たりにしているんですよわかりますか。1/35だから小指の先より小さいアメリカ人の顔。キリッとした俳優のような目つきとケツアゴ。ボルトアクションの鉄砲ならもう完全にRRRだったんですが、M1ガーランドでもいいよこの際。かっこいいから。
馬はピシッと立った姿勢のものと、ギャロップしているものが2頭入っています。ギャロップ、4つの脚が宙に浮く速い走り方ですが、この模型は蹄の角度を見る限り、おそらく左後ろ足が接地していて蹴り出す瞬間のポーズを立体化しています。躍動感のある馬のプラモ、けっこう貴重なんですが今日はどうやって地面に飾るのか悩ましいので一回置いときます(たぶん地面を作って穴を開けて真鍮線で接続する……みたいなことをしないと立ちませんねこれは。プラモデルって、たまにそういう思考をユーザーにぶん投げてくるからおもしろい)。
ここ数年はタミヤの3Dスキャンとデジタルデータを駆使したカンペキに位置決めできるミリタリープラモばかり作っていたので、手で原型を作ってファジーに起こされた金型のパーツを見るとなんだか逆に新鮮。当然ながら接着位置もパッケージのイラストを見ながら「ここかなぁ……」と探り探り組み立てていくことになります。全部言うことを聞いてくれる人じゃなくて、なんかこう、やんちゃな少年とくんずほぐれつプロレスごっこをしているような、緩やかな格闘……。
組み上がるとパッケージの小顔なアニキとはちょっと佇まいの違う乗馬男が出現。腕なんかもう、身体に巻き付いているいろいろな装備品のおかげでこの角度にしか組めない。でもいいんです。馬に乗ったアニキがそこにいるのが最高なんだぜ。
ミニアートって、ほんとうにいろんな佇まいの人間と景色を模型にしています。映画『RRR』はそのものズバリがプラモデルになっているわけじゃないんだけど、人間讃歌というか、躍動する男たちの美しさと強さにすごく感動しました。おかげでひさびさに人間のさまざまな姿を見たくなったので、しばらくいろんな人間のプラモを組んで、その美しさと強さの向こう側に、あの壮大なストーリーを幻視したいと思います。みんなRRRを観ろ。話はそれからだ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。