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オートバイの神様が作った、オートバイのプラモデル/ヤマハ テネレ660

 マン島TTを4度も制した男、タルクィニオ・プロヴィーニは1966年、深刻な怪我によってバイクレーサー人生を絶たれた。その後自分の名前を略して「プロター」というプラモデルメーカーを立ち上げる。彼の情熱とこだわりは、多くのプラモデルになって遺され、我々の眼と手を楽しませてくれる。

 パリ・ダカを駆けたヤマハのテネレ660は、現在イタレリブランドで販売されている。一般的なバイクモデルよりひとまわり大きな1/9というスケールは、このマシンの頑丈さを教えてくれると同時に、バイクというのがいかなる機械なのかを隅々まで理解できるようなギミックフルな設計を可能にしている。

ホビコレ イタレリ 1/9 ヤマハ テネレ660 1986 パリ・ダカールラリー

 説明書を開いて最初に目に飛び込んでくるのが、似たようなカタチの板を重ねていくミルフィーユのようなパーツたち。想像のとおり、これはエンジンのシリンダーブロックを冷却するためのフィンを実物そっくりに表現するための分割。いまから40年ほど前に誕生したプラモデルだけに、これがすんなりと美しいカタチにまとまるわけがないだろう……とハナから決めつけていた。タルクィニオよ、そんなオレを許してくれ!

 思えばタミヤで数々の名作を設計した木谷真人氏(いまはエブロというメーカーを営んでいる)も、かつてはプロターのバイクやF1モデルを観察し、驚き、もっといいものを作れる!と争っていた話を読んだことがある。タミヤの1/12 RC166なんて、まさにこのアイディアをサンプリングしたものと言っていいのかもしれない。

 ひとつひとつのフィンにはすべて異なる位置に穴とピンが設けてあり、重ねる順番や向きを間違えずに接着できる。パーツのカタチを整えたり、水平垂直をことさら気にすることなく、あっという間に超リアルなエンジンが現れた。プロターのプラモデルは、少し古くてイタリアンで、ちょっとアバウトなのかもしれないと思っていた。しかし、レースを何度も制したヒーローは、プラモデルの世界でも「どうだい、バイクって格好いいだろう?」と僕らに微笑みかけてくれるのだ。

ホビコレ イタレリ 1/9 ヤマハ テネレ660 1986 パリ・ダカールラリー

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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