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「めんどくさい!」が気持ちいい/バイクのプラモの可動チェーンを全部組まされる話。

 「ウソだ!」って思ったでしょ。オレも思ったよ。まさかチェーンをひとコマずつ組まされるなんて。しかもプラスチックの超小さいパーツです。金属ならわかるけど、どうすんのこれ。

 バイクのプラモデルとは切っても切れない関係にあるチェーン。ホンモノの構造をそのまま再現するのはたいへんだから、一般的には横から見たときにチェーンに見えるカタチをしたパーツを用意するのがほとんど。そのままでは「らしさ」に欠ける……と思う人は例えば歯が噛み合うローラー部分を職人的な技で彫り込んだり、あるいは極薄の金属製チェーンを実物どおりに組み上げる専用パーツを別途買ってきたりします。

 どっこいイタレリ(もとはプロター)の「1/9 ヤマハ テネレ660」にはチェーンをほぼ実物の構造と同じように組み立てるパーツが用意されています。ローラーが突き出たプレートにプレートを重ねて、先端部分を「焼きどめ(穴に通した棒の先端を熱したドライバーなどでほんの少し溶かしてネジの頭のように潰し、抜けなくするテクニック)」でどうにかしろ、と書いてあるんですよ。マジか。

 焼きどめのヤバいところは「ドライバーをライターで炙った瞬間はめっちゃ高温になるけど、瞬時に冷めてしまう」ということ。温度が安定しない物体で何十個も焼きどめしていたら死んでしまうので、今回は温度調節が可能なヒートペンを利用しました。ヒートペン、あんまり使う機会がないなと思っていたんですが、今回ばっかりは持っててよかった。

▲焼きどめが不揃いに見えますが、ちょっと離れたらマジで超リアルなんだってば。

 完成してみるとこれがもうめちゃめちゃに「チェーン」なんですよね。組み立て始めるまでは絶対にめんどくさいしやりたくなさすぎる……と思っていたんですが、ランナーそのものを重ねて一気に処理できるようにしてある設計のおかげで案外楽しい。

 ただチェーンの長さの指定が説明書どおりだとちょっと長すぎる感じもしますし、最後のリンクを繋ぐ瞬間は猛烈にしびれるというか、それはちょっと無理なんじゃないすか?というくらい難しい。「簡単!」「誰にでもオススメ!」とは決して言えないんですけど、歯ごたえのある工作でピリッとしたディテールが現れるのは嬉しいもんです。ここでもプロターという会社がユーザーに見せたかったこだわりと情熱が炸裂していて、ひとクセあるけどなんか憎めないなぁと思ったのでした。そんじゃまた。

ホビコレ イタレリ 1/9 ヤマハ テネレ660 1986 パリ・ダカールラリー

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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