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フィギュア造形のかゆいところに手が届く、オーバルエッジブレード/至高の刃付けで「切れ過ぎない」のがGOODです。

 地元静岡に漢方薬の荷居屋という店があります。なんかよくわからない木みたいなものをなんかよくわからない刃物で刻んでなんかよくわからない腹筋ローラーみたいなやつですりつぶして漢方薬を作る姿は、荷居屋の薬は良く効く……と話す祖母の言葉と合わさり、幼少の私に「おじいちゃんが作るのはなんかすごいやつ」というイメージを強く植え付けました(その様子は動画サイトで「静岡ローカルCM 荷居屋」と検索すればすぐに見つかると思います)。

 さて、趣味の工具売り場巡りで出会ってしまいました。シモムラアレックさんの「オーバルエッジブレード 斜刃 3.0mm」。パッケージ前面に唸る「職人刃付け手加工品!」「専門職人、先端刃付け」の宣伝文句。いや、僕も馬鹿じゃありません。昨今職人さんが刃付けした工具は多いですからね。それだけではそうホイホイ買いませんよと手に取って裏を見たらもう駄目でした。ギブアップ。お買い上げです。

▲まさか柄と口金まで職人さんが手作りで!このしわしわの手のおじいちゃんが……!

 そんな出会いでしたが、実際使うと今までなかった良き刃物でしたので紹介します。オーバルエッジブレードは丸い棒を斜めにカットしたような形の刃。一般的な刃物は直線です。比べて曲線の良さは狙いの付けやすさにあります。これはアートナイフの曲線刃や曲線のきさげを持っている方にはわかりやすいかもしれません。

 言ってみれば超硬い丸い棒を切ったものなのでいわゆる「刃物」の切れ味とは全く違います。先端だけが鋭く、鋭いとは言え当てるだけで切れるほどのものでもない。でも素材としては金属もえぐれるくらいの硬さの刃なのでちょっと力を入れれば滑らかに削れる。

 この特性は個人的にフィギュアを彫るのに最高でした。ちょっとゆるい感じのフィギュアのしわやパーツをコリコリと彫りなおすのに非常に都合がよかったです。デザインナイフとかタガネで彫りなおせばええやんとお思いでしょう。でもそれらの工具は切れ味がよすぎる。ちょっと手が滑ればしわが削り取れる、入れたくもない線が彫られる。私は大変苦手な作業でした。というか苦手すぎてやっていませんでした。

 ちょこっとこのポケットははっきり見えるようにしたいなーとか、ここの襟はもう少し別パーツみたくかっちりしててほしいなーというときにコリコリやれるようになったので、アニキたちがシャキッとしてきた気がします。自己満足の世界ですけど。

 あとは深く掘ろうとしない限りえぐれるようには彫れないので、ちょっとしたディテールを切り落とすのも便利です。周りを傷つけないのでその後ヤスリで軽くなでるだけで済むのがよいですね。とはいえこれは研いである平刀使った方が良い気もします。

 この程よい切れ味と狙ってないところはあんまり傷つけない感じというのはキサゲにちょっと近いかなと思うけどキサゲよりもっとコントロールが効く感じがいいです。これには職人手作りの柄も影響しているかもしれません。はんなりと後部がシェイプしていてとても良いです。

 よく切れるということが評価軸になりがちな刃物の中にあって、切れないことを褒めるというのが正しいのかどうかはわからないですけれど、この切りたいところだけとしっかり切れるというこの老獪な工具は、まるで作ってくれたしわしわの手の職人さんのような温かみを感じる一本です。今までの人生、触れるものみな傷つけることもありましたが、これからは荷居屋の職人さんのように落ち着いて丁寧にプラモデルに向き合っていきたいと思わせてくれる工具でした。

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