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徹底的なアシンメトリーで組む者を天界に誘うプラモデル/Figure-rise Standard エンジェモン

 山登りには「ピストン」と「縦走」という概念があります。前者は頂上まで登って、同じ道を引き返すルート選択。後者は頂上から頂上へと稜線を渡り歩くスタイル。私は日常生活でも来たのと同じ道をもう一度歩いて戻るのがあまり好きではないから、目的地への行き帰りは違うルート選択をしがちです。そんな人間にとって、フィギュアライズスタンダード デジモンアドベンチャー エンジェモンはとってもとってもいいプラモでした。左右対称な人型の物体を組み上げるはずなのに、徹底的に左右が非対称なんですよ。同じことを2度するのが嫌いな人、これ買って組むといいです。

 これは右脚のパーツ。青い布がぐるぐる巻きついた様子はちょっと柔らかい樹脂で再現されていて、膝関節の可動ギミックをまたいで脚の左右側面に設けられた切り欠きに引っ掛けて固定する、という塩梅。

 文字で書いてもこれはあんまり伝わらないでしょうけど、バラバラに分割された青いパーツが脚の周りにピタピタとくっついて、関節の動きを妨げずにそこにある、というのはかなり面白い。完成したところを何人かに見せたけど、みんな「え、これはどこで分割されてるの?なんで膝が曲がるの?」と怪訝な顔をしていたのが良かった。

 左右の脚を並べてみると、このキャラクターがいかにアシンメトリー(左右非対称)なデザインなのかが一目瞭です。青い布がぐるぐる巻きになった右足、脚絆のようなアーマーを装備して、金の意匠が象嵌された左足。靴の部分もじつは左右でデザインが違うから、「右脚を組みましたね!じゃあ左脚で全く同じことをやってください」みたいにならない。作業の「おかわり」が基本となるロボットや人間のプラモデルで、このプラモデルは効果的な「味変」が楽しめるのです。パーツ構成は見た目よりずっとシンプルで、よく考えてあるなぁ……と感心しきり!

 右足と同じように青い布がぐるぐる巻きの左腕。キャラクターデザイン的には背中で腕と脚の布がひと続きになっている……ということで、長い青パーツが左腕から右足へと伸びる。うまいことパーツの切り欠きが噛み合って、お互いの位置がロックされるようになっています。

 可動プラモなのに、硬い布のパーツが自らの動きを制限する(でもアクションポーズも諦めたくない!)というのがなかなかアンビバレント。このロックを外せば自在にポーズが取れますが、あえての「動かしづらくなった状態=本来のデザインの模型」を楽しめるかどうかが大人の階段なのかも!

 ムキムキの胸筋や腹筋が見目麗しいエンジェモン。メタリックカラーが随所に配されていて、それも徹底的に左右非対称なのがまたいいんです。「作業」にならず、ずーっと「エンジェモンのデザインの妙」を解析し、それに惚れ惚れするような時間が流れます。ほんの少しだけ青みがかっていて、まったく透けない白のプラスチックの質感もまた最高!塗装じゃこの雰囲気は出ません(断言)!

 6枚の美しい翼を背負わせて、完成。よく動き、プロポーションは良く、色使いも完璧。そして組んでいる間も気持ちの良い雲上の尾根を歩いて、次々と現れるキレイなピークたちを眺めて歩くような、爽快な縦走を思わせる非対称デザイン。エンジェモンは、組む人の手を止めることなくプラモデルの楽しいステップに誘い、いつの間にか天界へと導いてくれます。みなさんも、ぜひ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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