アオシマの移動販売シリーズは軽トラ(キャリィ)をベースにさまざまな移動販売車をモデル化しており、中には警察や陸運局にハチャメチャに怒られそうな奇抜なデザインのものから、「お祭りわっしょい」ともはや概念の移動販売車までラインナップされています。
シリーズのひとつ、「やきとり竜鳳」は実在する焼き鳥チェーンをモチーフにしており、エントロピーが増大しパッションが保安基準からはみ出しがちな移動販売シリーズの中ではスケールモデルとして質実剛健な立ち位置を占めています。
過去のシリーズの金型を流用しつつ再編したキットらしく、歴史を感じる質感のランナーと、新規金型のランナーが一緒に入っています。説明書通りに気楽に組み上げても楽しいのですが、ディティールアップにも挑戦してみようかな、ジャンクパーツ(不使用パーツ)を使って改造してみようかな、と無理なく思わせるとてもよいバランスのディティールです。
このキットにはフィギュアが付属しておらず寂しかったので、フジミのフィギュアセットのメカニックを改造し、焼き鳥職人に転職してもらいました。フジミのキットもまさか焼き鳥を焼くことになるとは思わなかったとでしょうが、自分にはどんな仕事が向いているのかは自分では分からないものです。
厚紙に印刷されたタペストリーやデカールを貼ると完成です。「高圧ガス」のデカールや、大きなロゴのデカールを貼るごとにモリモリとやきとり竜鳳らしくなってくるので楽しくて仕方がありません。
組み立てて塗装をしているうちに「このプラモデルが似合うジオラマが作りたい!」という思いが湧きあがり、スーパーの駐車場にいる光景のイメージがおぼろげながらはっきりと浮かんできたので、サンドペーパーの地面にプラ材でジオラマを作ってみました。
ピースサインをしているフィギュアも、やきとり竜鳳の前に置くと焼き鳥を注文している姿にしか見えなくなってしまいます。スーパーの駐車場の一角で焼き鳥が買えることは、この上なくピースなことなのかもしれません。
移動販売シリーズはエントロピーが増大したハチャメチャなラインナップと思いきや、ふとこのような秩序の塊と言えるキットをさりげなく放り込んでくるところに、アオシマというメーカーの凄みと強さを感じました。