箱を開けた瞬間に、「ワーォ」と思わず英語話者のような感嘆詞が口をついて出ちゃった。黒、グレー、ベージュの3色のプラスチックが、組み立てられるのをウズウズしながら待っているようにしか見えないでしょ!ランドローバーの四角四面なボディ、ファブリックの素材感が彫刻された幌、そして自動車が走るためのメカ。それぞれが違う色になっているだけで、プラモデルはこんなにも魅惑的に、輝かしく目に映るってことよ。
>ホビコレ イタレリ 1/24 ランドローバー 109 LWB(日本語説明書付き)
自動車のプラモデルは、完成したら8割がた「ボディの色と形」に支配されちゃう。だから、ペダルがどんなカタチだとかサスペンションがどんな仕組みだとか、そういう要素は組み立てながら目の前を通り過ぎ、記憶に刻まれるためにあるようなもんだ。自分が組み立てたプラモデルを知らない誰かがむんずと掴んでひっくり返してまじまじと見るなんてことは、まずない。だから、ここに黒いプラスチックで鋳込まれたパーツたちは「買った人だけのお楽しみ」だと思ったりする。
このプラモのすんばらしいところは、説明書がきっちり日本語表記になっていること(もとはイタリアのメーカーの製品で、説明書はすべて英語だ)。塗装の指定もぶっきらぼうな英数字の羅列じゃなくて、色の名前が書かれているのが嬉しい。いちいち「C4って何色だっけ……」とページをいったり来たりしなくて良いというのは、このプラモのスピード感にも絶対に寄与してくれる。願わくば、すべてのプラモがこうであったら。
こうやってパーツをとりあえず置いてみると、たぶん黒い部品は黒のまま、幌はベージュのままでじゅうぶん見栄えのする完成品になりそうだという予感がビシバシ伝わってくる。グレーはプラモデルの世界において「これから色を塗られることを待っている色」でもある。説明書の最後にチラッと書いてあるように、あなたはこの車のオーナーになり、機械の仕組みを完全に知悉し、それからあなたの好きな缶スプレーを気の向くままにボディに吹き付ければいい。あっという間に、世界で一台の、あなただけの完成品が生まれるはずだ。
>ホビコレ イタレリ 1/24 ランドローバー 109 LWB(日本語説明書付き)
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。