タミヤのようでタミヤじゃない、でもMMなプラモデルというのが世の中には存在しております。「WW1 イギリス歩兵・小火器セット」もそのひとつ。タミヤのキットとはまた違う、「そこがそうなるのか!」という味わいを楽しめるキットです。
このキットを作ったのはICM。ウクライナの模型メーカーです。ことミリタリー系のフィギュアに関しては、ちょっと変わったシチュエーションのセットを作ってみたり、第一次世界大戦関連のネタを妙にまんべんなくリリースしたり、「そこを攻めるの?」と言いたくなるような武器セットを発売したりと、”王道のちょっと脇道”みたいな感じのプラモデルをたくさん作っております。前述のように第一次世界大戦もののフィギュアに関しては参戦各国のフィギュアをたくさん作っておりまして、今回紹介するキットもその中のひとつです。
このキットがタミヤから発売されたのは2015年。この頃は1914年に開戦した第一次世界大戦から100年後というタイミングで、タミヤも2014年に菱形戦車のマークⅣをキット化しています。それに合わせてラインナップを拡張するような意図があったのかな……というキットですね。
箱の中身はランナー3枚。実は元々キットとしては一番右のランナーだけで完結していて、普通にフィギュアを組み立てるだけだったら小火器セットのランナーはいりません。が、箱絵を見ると兵士がシャベルを背負っていたり、手榴弾をベルトに吊っていたり、将校が帽子ではなくヘルメットを被っていたり、擲弾発射器付きのライフルを持っていたりと、「小火器セットはこう使ってね」というタミヤからのメッセージが。なるほどね……。
細部に関してもフィギュアが得意なメーカーらしく、なかなか見どころが多いです。特に小火器セットの方は面白ポイントが豊富。P08装備の特徴である細かい弾薬ポーチや、第一次大戦らしい毒ガス警報器、カバー付きのヘルメットなど大充実の内容です。特に強烈なのがエンフィールド小銃。ライフル本体と上部に取り付けるタンジェントサイトが別になっております。これによってモールドしにくいライフル上部のサイトがカリッと仕上がり、うるさいガンマニアもニッコリ……というわけですね。さらにライフルで言えばカナダ製のロスMk.IIIも入っており、もう英連邦軍はこれだけあれば充分という感じです。
組んでみるとこの感じ。ちょっとポーズは硬いですが、なんとも生真面目そうな雰囲気のフィギュアです。今回は小火器セットの部品を使わずICM推奨の組み方で完成させていますが、せっかくなんでセットされている部品を使って好きなようにカスタマイズするのももちろんアリ。箱絵みたいにシャベルを背負わせたり、鉄条網を切るためのワイヤーカッターを持たせたり、カバー付きのヘルメットに交換したり、装備品に手榴弾を吊ったりと、夢が広がります。
最近はちょっと画像検索すれば第一次大戦当時のイギリス兵の写真も色々出てくるので、その辺りを参考にしつつ小火器セットの部品を取り付けるのもアリ。どうやって背中にショベルを吊ってたのかとか、ぜんぜんわからんもんね。そこからどっぷりと第一次大戦の世界に入って行くのも、また乙かもしれません。なんにせよ、好きな装備品を持たせるために必要な部品は全部揃っています。一箱で気軽にフィギュアのカスタマイズを楽しめるセットとして、非常におすすめなキットですよ!
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。