進めばいくつ?/『水星の魔女』スレッタ・マーキュリーのプラモデルにバンダイスピリッツの歩みを感じた話。

▲Figure-riseBustシリーズの瞳は組み立て式やレイヤードインジェクションで表現されてきた

 放送開始前に発表された「水星の魔女」のプラモデルシリーズのラインナップを見て私はぶったまげた。第三弾(プロローグ分を含めると第五弾)で主人公のパイロットのプラモを出すのか、と。そうして放送開始早々の3話が放送になる週末に発売された「Figure-rise Standardスレッタ・マーキュリー」はこの数年でバンダイスピリッツが得た美少女プラモの経験値がギュッと濃縮されていてもう一度ぶったまげることになった。

 近年のバンダイスピリッツの美少女プラモはFigure-Rise LABOシリーズを筆頭に様々な試行錯誤を繰り返しながら進化してきた。特に「瞳の表現」については、レイヤードインジェクション(複数色のプラスチックをひとつのパーツのなかに閉じ込める方法)を用いたり、あらかじめモールドを成型したりと表現方法の模索がなされてきた。

 それがごく最近の30MSやトウカイテイオーではタンポ印刷(プラスチックの表面に版画のようにインクを乗せる方法)での表現に変わった。今回のスレッタもメインとなるフェイスパーツのひとつは瞳が印刷済みだ。そして残りのふたつのフェイスパーツには水転写式デカールを貼り付けるのだが、今回は説明書に「詳細な貼り付け位置のガイド」が明記されていて、何よりこれにビックリした。

▲これをよく見て貼れば劇中のスレッタの顔が表現できるぞ

 作ったことがない人にはピンとこないかもしれないが、瞳のデカールは位置がほんの少し……たとえば線一本分ズレただけで表情が変わってしまう事もある。塗装で瞳を表現するにはかなりの経験と技術が必要になるが、瞳デカールの貼り付けにもそれなりの経験と技術が求められる。要するに、けっこう難しいのだ。今回はそれを補うために「絶対に完璧な位置に貼らせてみせる!」と言わんばかりに上下左右方向の計7本の軸で指示した細かい指示図が付いている。

 過去の試行錯誤と今回の貼り付け指示図から、バンダイスピリッツが瞳の表現にたいへんこだわっていたのだなと改めて感じた。これまで目指していたのは「水転写式デカールの貼り付けは難しい。だから何らかの方法であらかじめ瞳が成形してあればミスを起こさずみんながイメージする”あの顔”が組み立てるだけで手に入るじゃないか」だったのだと。

▲Figure-Rise Standard アスナは瞳がモールドされている

 ただ、先に書いたとおり現在ではタンポ印刷とデカール貼り付けでの表現になった。けれどそうなっても「みんなのイメージ通りの表情を絶対に表現するぞ」という強い意志を感じる貼り付け指示は非常に頼もしい。

 そして瞳の表現だけにとどまらず、手首が同社の美少女プラモシリーズ、30 MINUTES SISTERSとの共通規格、というかそもそもランナータグ(パーツ番号)が連番になっていたり、他にもこれまでの美少女プラモの経験がギュギュッと濃縮された進化をふたつどころかいくつも感じることができる。

▲HA-1が30MSのハンドパーツで、HB-1がスレッタのハンドパーツ。姉妹じゃん。

 来月にはもうひとりの主人公ともいえるミオリネ・レンブランのプラモが発売される。そこにはまた、きっと何かが込められているはずだと思うと、彼女に会えるのが待ち遠しい。

kassi
kassi

ガンダムをはじめとしたロボットプラモやFAガール、30MSの美少女プラモが好きな1981年生まれ。毎週日曜日にnoteで文章を書いてます。