「世界にはいろんな肌の色がある」という超当たり前のことを反映して、絵の具やクレヨン、色鉛筆といった画材から「はだいろ」という名前が消え、前世紀まで日本で肌色と呼び習わされてきたトーンは「薄橙」とか「ペールオレンジ」とラベリングされるようになりました。プラモデルやフィギュアに慣れ親しんでいる人も、いろんな肌の色の兵士やキャラクターがいることを知っているはずです。そして「瓶から出してベタッと塗れば望みの肌の色が手に入るといいんだけどな」と思ったことがあるでしょう。
水性塗料のなかでも安定供給されていて知名度の高いスペインのファレホというブランドにも、ひたすらいろんな色調の「肌の色」がラインナップされています。なかでも広くミリタリーモデルを中心に対応した「モデルカラー」と、ミニチュアゲーム用の「ゲームカラー」の棚をザーッと眺めると、焦げ茶に近いものからほとんど白に近いものまで、よりどりみどりなことごに気づきます。ちなみにラベルが違っても性質はほとんど同じ。
たとえば日本人が肌色と呼び習わしてきたモンゴロイドの肌はゲームカラー72.099「カドミウムスキン」が近いと感じます。日本のアニメのキャラクターでよく見るようなトーン。ボトルをよく振ってからペーパーパレットに出すだけで塗装スタンバイなので、すごく楽ちんです。無臭の水性塗料かつ混色なしででこの色調が得られるのはゲームカラーのすごくいいところです。小さいモデルなら「染め塗り」が有効ですが、広い面積だとベターッと塗りたい日もあります。
水性塗料とはいえ、乾けばしっかり定着し、上から塗り重ねても溶け出すことはありません。そして当然シタデルカラーのシェイドを上塗りしても大丈夫。もっと薄いトーンでバキッとハイライトを描くもよし、ベースをどっしりとした褐色にするもよし。ファレホの棚の前で隅々まで塗料を眺めると、きっとあなたが「これだ!」と思える肌の色があります。色の名前にとらわれず、じっくりと探してください。アニメも写実も、モンスターもエルフも、あなたが決めた肌の色で塗ることができるはずです。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。