100年経っても美しい、元祖女性型ヒューマノイドのプラモデル。

 あなたの『メトロポリス』はどこから?私は『別冊 ガンダム・センチネル』において村雨ケンジが書き記した「ロボットとはなにか?」という趣旨のコラムでこの造形を知った。時は流れて幾星霜、ついに日本のエクスプラスからその完全新規プラモデルが発売された。アメリカの古き良きプラモデルのありさまを彷彿とさせるパッケージ(堅牢な光沢のある貼り箱)は、そのままずっと取っておきたくなるような素晴らしいデザインだ。

 1927年にドイツで生まれた映画『メトロポリス』を知らなくても、その世界観と女性型アンドロイドの造形が現在に至るまであらゆるところで大きな影響を及ぼしていることは理解できるはずだ。『スターウォーズ』のC-3POはもちろんのこと、マドンナ、QUEEN、KRAFTWERKといったアーティストがインスパイアされ、数々の作品を残しているし、階級社会の孕む矛盾、意識の在り処、人の手で作り出された実在しないアイドル……というスペキュラティブなテーマも高い普遍性を持っている。

 優美な曲線で女性の身体を模したアンドロイドは、うっとりするような金色のプラスチックに分解されて収まっている。映画で使用されたプロップはすでに焼失しているし、映画のオリジナルフィルムも断片的にしか残らず、現在は不完全な形でしか観ることができない。しかし多くの人がフィルムの中に見出したマリア(の素体となるアンドロイド)の美は語り継がれ、こうして新たにプラスチックモデルとして生まれ直したのだ。

 いまや誰ひとりとしてホンモノの構造を知ることがないメトロポリスのアンドロイド。しかし、このプラモでは、硬い外装の中にいかにも柔らかそうな女性のカタチをした「芯」が用意されている。当時のスーツアクターのようにも、アンドロイドが内包した自我のようにも思える不思議な艶めかしさに動揺しない者はいないだろう。幸いにして、『メトロポリス』についての知識はいくらでも読むことができるし、映画も(数多くの別バージョンがあるものの)パブリックドメインとして動画サイトで自由に観ることができる。ロボットの造形を語る上で絶対に外すことのできない金字塔をあなたも手に入れ、その指先で歴史を追ってもらいたい。

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。