プラモの設計は「何を拾って何を捨てるか」のせめぎあいだ/MONO R32 スカイライン GT-R V・Spec II

 わりととんでもないプラモデルが登場しました。ボディもライトも塗装済みで、手のひらサイズです。
 「いや〜、プラモは自分で塗るもんでしょ」などと言っていたらこういうプラモのことはよくわからないまま終わりますので、組んでみましょう。オレより塗るのがうまかったらこまっちゃうな〜。っていうか、1/32のクルマのプラモが塗装済みで実売2000円ちょいなの、スゴイことですよね……。自分で塗ってたらけっこうな時間がかかりますよこれは。

ホビコレ MONO 1/32 オートモービルキット ニッサン スカイライン GT-R V・SpecII スパークシルバーメタリック

 ヘッドライトは左右がつながった形状でパーツになっていますね。ウインカーはクリアーオレンジで塗られています。裏側から塗られているので表面はツルッとした光沢が生きているのですが、デメリットとして塗り分けラインがクリアーパーツの向こう側になるから境目がシャキッとしないんですよね。
  たとえばクリアーオレンジのパーツが別途入っていたらそのへんの問題はすべて解決なんでしょうけど、そのためには金型が新しくふたつ必要だし、組み立ての手間が2パーツぶん増えます。値段か、見た目か、組み立てる手間をどれくらいにするか……。プラモは再現性が高ければ絶対に偉いというわけではなくて、やっぱりいろんなバランスの上に成り立っているんだよな〜ということに思いを馳せます。

 塗装済みで本当に素晴らしいぜ……と思ったのはフロントマスク。フロントグリルの奥まったところが黒く塗られています。ここをキレイに塗り分けるのはなかなか難しい。何より見た目にテンションが上がります。
 「黒いパーツで開口部の裏側を塞げばよくね?」という解決策もあるにはあるのですが(たとえばアオシマの同じく1/32スケール ザ・スナップキットのR32 GT-Rではその方法が採用されています)、リップスポイラーの色分けとかVスペにしかないバンパーのふたつ穴とかをどうするんだみたいな問題があり、やはりプラモの開発(というか仕様決定)って難儀だなぁ……と思うわけです。

 問題はこのキャビンですよ。バスタブ形状になっているんですが床が異常に高い!ハンドルの下端は床にくっついてるし、シートの背もたれは居酒屋の座椅子みたいな低さです。「えーリアルじゃないじゃんアオシマの1/32モデルはキャビンがちゃんと深くなってますよ〜?」と、ワタシも思いました。ところがですね。

 黒いプラスチックのシャーシを裏返すと目のさめるような深い彫刻!ここは流石に無塗装ですが、一体パーツでかなりリアルに実車の雰囲気を表現しようと頑張っているポイントです。アオシマの1/32スケール ザ・スナップキットではここが真っ平ら。たしかにここは価格に差が出るポイントですわ……。

 いや待てよ? そんならアオシマの室内パーツをこのプラモに合体させれば超リアルなR32ができちゃうんじゃないですか?……と思って合体してみたら、室内パーツがボディとシャーシのあいだに収まらない。
 そう、車の床はほとんど鉄板一枚(1/32なら1mm以下の厚みになるはず)ですが、プラモデルだとシャシーのパーツと室内の床パーツが二重になるので相当分厚くなる。とくに1/32ではその厚みが再現性に対して顕著に影響するわけです。アオシマのプラモは「床下をまっ平らにして、室内をちゃーんと深く彫刻する」という取捨選択をしてたんすね……。なるほど。いままで気づかなかったわ。

 ……とはいえMONOのR32、床板とバスタブの間にはコレくらいの空間があります。うーん、もうちょっと深く作っても良かったんじゃないっすかね。でもそうすると金型が深くなりすぎてシートやコンソールの形状を再現するのが難しくなったりするのか。それとも何か他の事情があるのだろうか。どうなのだろうか。まあいいや、ボディ被せてみましょう。

 あ、全然違和感ない!ハンドルも背もたれもほとんど上端しか見えないんすね。だからオールオッケーというわけじゃない人もいるかもしれませんけど、ボディが塗装してあって灯火類もばっちり色分け済み。組めばこれだけピリッとしたカーモデルに見えるというのはなかなかのことです。なによりR32のシルバーの塗色は実車そっくりで、これだけキレイにシルバーを塗るのはかなり難しいもんね。

 腕に自身がある人はアオシマ1/32モデルとガッチャンコしてもいいでしょうし、ニッパーも握ったことがなさそうなあの人に「プラモいかがっすか」と贈り物をしてひとしきり盛り上がってもいいでしょう。
 プラモって、他のいろんな製品と同様に「着地点に到達するまであれやこれやと捨てたり拾ったりしながら作られるプロダクト」なんですよね。選択肢はたくさん。怒ったりせずに、なるほどこれはこういうプラモなのね、というのをフラットに楽しみたいなと改めて思ったのでした。そんじゃまた。

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<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>/nippper.com 編集長
からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。