このパッケージ見て「わ、これ買おう!」というのはなかなか上級者ですよね。どう見ても二人乗りの練習機だし、戦闘機のシュッとした感じはないし、かと言って自家用機のような可愛さとは程遠いアメリカ空軍の国籍マーク。だけど、だけどなんですよ。箱の中はまさにエルドラド。いらっしゃいませ。
ほらもう欲しいでしょ。繊細なパネルラインは凹線で彫られていて、ピシッと並んだリベットは微細な凸の彫刻。垂直尾翼のリブ表現なんて向こうが透けて見えそうなほど薄い。メンターという正直パッとしない飛行機をプラモにするときに、明らかにそこに「この世でいちばんメンターが好きなんじゃ!」という設計マンがいる。そうとしか思えないほど、情熱的なんです。
コクピットもご覧のとおり。前席と後席で連動する操縦桿のリンクとか、ボタンやスイッチの数々がパリッと彫刻してあって、さらに不思議なカタチをした側面の壁はコンソールの類にピッタリと寄り添いながら、前方で脚収納庫の壁も兼ねるというトリッキーな設計で組むものを喜ばせてくれます。パーツ同士が思ってもみないラインで組み合わさり、思ってもみなかった機能を獲得するのってプラモを組んでいていちばんうれしい瞬間かも。
胴体の腹側には主翼の桁とこれまた脚収納庫の前後壁を兼ねた板状のパーツがふたつ渡されます。胴体左右パーツの合いは本当にマーベラスなんですが、主翼下面〜胴体下面のパーツはちょっとだけ大きくてハマりきらないので、慎重に仮組みをしながらヤスリで胴体下面に収まるように削ったほうが良さそう。でもそんなことどこかに吹っ飛んでしまうような魅力がこのプラモにはあります。
「でもこの飛行機がハコに描かれた絵みたいになるなら、あんまり好みじゃないな」という人もいるかもしれません。このキットを推したい理由はもうひとつ。デカールなんですよ。
日の丸も入ってるんですよね。細かい注意書きとかはスパッと省略されているから、本当に貼りたいのだけパーンと貼るのが良さそう。幸いシルバーにまるっと塗ってもカッコいいし、武装が付いていない飛行機なのでもし自分が手に入れたらどうしようかな、なんて自家用車的な色に塗ってもオッケーな感じがよろしい。さらにクリアーパーツで飛行状態にディスプレイできるスタンドも付属していてマジお得。
何から何まで「好きでやってんだな〜!」ってのが伝わってくるナイスプラモですので、見つけたら手に入れておきましょう。そんじゃ!
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。