じつに9色14枚のパーツがハコから飛び出してきました。グッドスマイルカンパニーのくみたてモルカーシリーズのなかでも最大級にゴージャスな内容の魔法天使アビー。いままで発売されてきたモルカーたちを再現するためのパーツ分割を活かし、さらに複雑な色分けと造形を表現するために不要パーツの発生も覚悟で作られた魔法天使アビー。もはやMSVみたいなもんですねこれは。
基本的なキット構成は上の記事で示したとおり。パーツをブチブチと指で切り離し、そのまま説明書の言うとおりに組めばあっという間にカタチになります。いくつか組んだ人は寝ながらでも組めるかもしれませんねもう。
さて、いまから14年くらい前にプラモデルの世界では空前の痛車フィーバーが起きました。いわゆるアニメとかゲームのキャラがドバンと貼り込まれたクルマのプラモです。「痛車をプラモで作ってみたw」というユーザーはそれよりちょっと前からいたことはいたのですが、メーカーにしてみれば「既存のクルマ模型にキャラクターのデカールを入れれば新製品になる!」というすごいパラダイムシフトですから、みんながこぞって買いました。そしてまずカーモデルをキレイに作るテクが必要であることに気づき、さらにその上からめちゃくちゃ難しい「巨大なデカールを無数に貼る」という作業を要求されることに気づくわけです。作れる人はまちがいなくプラモがスーパー上手い人。絶望の果てにそのまま手放してしまった人も多かったはずです。
このプラモは「魔法天使アビー」と「痛車アビー」を選んで組むことが出来ます。んで、「痛車」要素はこのテトロンシールが用意されていることで誰でも楽しむことが出来るようになっているんですよね。デカールだとかなり気を使う巨大なキャラ絵だけど、透明台紙のシールならまあ貼れますよ。これは痛車プラモの民主化だ。
さらに「えらい!!」とデカい声を出してしまったのがこの蒲鉾みたいなピンクのステッカー。かつての痛車ブームでも多くの人が頭を悩ませた「下地の色が透けてキャラ絵の顔色が悪くなる」という現象を防止するために、青い窓パーツにかかる部分のキャラ絵の下にこれを貼ることでシールの肌色が均一に発色するんじゃよ〜というおもてなしなのです。何川クリステルなんでしょうか。この企画考えてる人すごくない?
組み立てた後はたくさんのシールをピンセットでちまちま貼っていきます。曲面に対して平面のシールを貼り込んでいくのでどうしてもシワになるところは出てきますが、ちょっと離れてみるとかなりゴージャスな痛車が手に入ります。たとえばこういうソリューションって、アオシマの楽プラなんかでも取り入れられるといいかもしれませんね。透明シールはどうしても透け感があるので、デザイン次第では銀色のホイルシールなんかでも、「実感よりゴージャスさ!」という演出が出来るはずだんだよなぁ(「移動販売シリーズ」なんかはユーザー層もゴリゴリのモデラーばかりじゃないはずなので、なおさら!提案したい!!)。
ということでカーモデルの来し方行く末をちょっとだけ考えてしまったウルトラナイスな20年代の痛車プラモ、こんな方向に進化(変化?)するとは思いもよりませんでした。みなさんも、ぜひ!
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。