

MODEROIDのくみたてモルカーに新しい仲間が加わった。こいつの名はチョコ、茶色いからチョコ。『PUI PUI モルカー』ではメインを張りこそしないものの、8話でかなりキャラが立っていた彼女。さあ組み立てましょう遊びましょう。
くみたてモルカーの基本的な構造はみんないっしょで、色やオプションパーツなどで差別化が図られている。全体的な組み味のことは以下の記事に書いたので読もう。チョコの場合はサイドミラーに付いている花飾りが特徴だ。とにかくマッハで組み上がるので、そのままコレクションしてもよし、そこからどう遊ぶかを考えてプラモの楽しい工程を味わうもヨシである。



さて、このキットのプラスチックは標準的なミルクチョコレート系の色。どっこい、チョコレートってカカオの含有量とかでめちゃくちゃ色が変わるよね。オレはカカオ70%〜90%のビターなチョコレートが好きだぜ……。なぜならウイスキーを飲むからね。

……などと考えながら模型店の棚をグルグル歩いていると(日課)、そのものズバリの塗料が棚に鎮座していた。タミヤの「デコレーションカラー」だ。これはいわゆるスイーツデコを趣味とする人たちのためにタミヤアクリルをリパッケージした製品。模型を塗ってもいいし、菓子の形をした何かに塗ってもいい。家電量販店だとハンドクラフトのコーナーや塗料棚の端っこに模型用とは違う雰囲気で陳列してあったりするが、模型専門店で見かけることはまずないだろう。兎にも角にも、中身はみんなが知っているタミヤアクリルと全く同じ性質だ。

チョコ色に塗りたいパーツだけを残してバラし、エアブラシでデコレーションカラーを吹いてみた。おそらくだが、中身はタミヤアクリルの「レッドブラウン」と同じ色に見える。チョコレートは何色だろうか……とマジメに考えたことはあるか。ないだろう。しかし、なにがしかの茶色を(それがドイツ陸軍の迷彩色だったとしても)「これを塗るとチョコレートに見えます」と言われるとチョコレートに見える。不思議だ。そして問題はブラウニーの如きガサガサのつや消しであることだ。テンパリングを怠らなければ、チョコレートはもっと艷やかな輝きをたたえている。

デコレーションカラーのコーナーに必ずセットで置かれているタミヤの「つや出しニス」も買ってきた。これでツヤを出してみようじゃないか。たしかに砂糖でコーティングされたものとかフルーツの断面とか、スイーツデコを嗜むならばツヤの有無は敏感になりたいはずだ。モデラーよ、ツヤに気を配ろう。

蓋を開けると黒い刷毛がくっついている。これをおもむろに表面に滑らせてみると……ウオー!楽しい。
おそらく中身はタミヤアクリルの「X-22 クリヤー」だろう(薄めたければアクリル溶剤を足すべし、と瓶に書いてある)。そしてこの黒い刷毛はマニキュアに付属しているものを彷彿とさせる。信じられないことにこれがめっぽう塗りやすい。いったい何が起きているんだというレベルである。ふだんからマニキュアを塗り慣れている人たちはこんなにコシがあって平たくなめらかに広がる刷毛を使っているのか!としばし呆然とする。
とはいえ、今日いきなりマニキュアの刷毛に向き合った人間にとって、これをムラなく塗るのはちょっとむずかしいし、返し筆(乾いていない状態で二度筆を滑らせること)をすると、下地に塗ったチョコレート色の塗料が溶け出して薄く持っていかれる。すべらかに薄く塗り重ねるよりも、ぽってりと乗せてツヤを出すことに集中するのがコツなのだろう。

缶スプレーのクリアーを吹いた右のモルカーと比べると少々ムラ(というより塗膜の凹凸)があるけど、たしかにスイーツデコを作るならこれくらいの手作り感があったほうが「リアル」と言えるかもしれない。なにより「スイーツデコを嗜む人は普段からマニキュアを塗るのにも親しんでいる可能性が高いだろう」という推測をボトルの形状や機能に落とし込んだ商品設計が見事である。
「マニキュアと同じ感覚で塗るクリアー」に仕様を置き換えただけで、普段エアブラシや筆で扱うのとはこんなにも違う気持ちで向き合えるのだということをオレは今日の今日まで知らなかった。この感覚は強い身体性を伴うものなので、いちどやってみるしかない。いや、やるべき。なんか模型用塗料のクリアーに対するイメージそのものが変わった。

つまるところ、つや出しニスはタミヤアクリルの光沢クリアーをめっぽう気軽に(少面積なら)キレイに塗れるマジックツールでもある。下地がラッカー系塗料であれば溶け出すこともないだろう。懐に忍ばせておけば、デカール貼りの下準備やフィギュアの瞳にそっと入れる質感表現など、広範囲に応用が効くはずだ。モルカーのプラモともども、ぜひ手に入れてほしい。
チョコレート色の塗料も、つや出しニスも、じつはいままで触ったことのあるタミヤアクリルだった。しかし実際に触って試してみると、全く違う体験がある……。名前が違えば美味しそうに見え、塗る道具が違えば手さばきも全く変わり、そして最後の最後に、仕上がりそのものの許容度すら変貌してしまう。ああ、認知とはなんてガバガバなのだろう……。さあ人類よ、ビビらずにデコっていこう。