

ドム・トローペンの足にくっついているフィルターは、メッサーシュミットBf109のエアインテークにくっついていたフィルターから引用されたデザインである……というのは割と有名な話。こういう「給気口にフィルターが装備された機体は砂漠/熱帯仕様だが、野戦飛行場での運用でも有効だったため他地域に配置される機体でもそのまま生産された」みたいなウンチク、心の中にいまだにミリタリーマニアの中学生を飼っている身としては「あ~はいはい、メッサーのアレね」と受け身を取りつつも、やっぱりキュンと来ちゃいますね。嬉しいもんは嬉しいんだからしょうがない。


そんな「砂漠だからフィルター付き」なメカのオリジンにして最も有名な機体のひとつが、ハンス=ヨアヒム・マルセイユが搭乗したメッサーシュミットBf109F-4/Tropです。マルセイユは1919年12月13日生まれ。フランス人っぽい名前ですが、これは彼の先祖がフランスのカトリック教会から迫害され、1600年代後半にドイツに移住してきたユグノー教徒だったことに由来します。

天真爛漫なイタズラ小僧気質でありながら、総撃墜数158機というスーパーエースであり、「アフリカの星」と呼ばれた名パイロット。フィクションかな、というくらい出来過ぎの人物像です。また、大戦中のドイツ空軍のエースは大体みんな東部戦線で大戦果を挙げていますが、マルセイユの撃墜スコアのほとんどは主にイギリス軍と戦った北アフリカで記録されたもの。戦闘機とパイロットの質で言えば、ソ連軍に勝る西側陣営相手の空戦。それでこれだけのスコアを挙げているのは、ドイツ空軍でも突出した記録です。その上イケメンでお茶目だったのでベルリンではムチャクチャにモテたそうですが、機体トラブルから脱出を試みたものの垂直尾翼に激突し、1942年9月30日に墜落死で亡くなっています。
で、そのマルセイユが乗っていたのがBf109F-4。この機体をシャキッとしたプラモデルにしてくれたのがファインモールドです。旧日本軍の兵器に強い印象があるファインモールドですが、例外としてこのBf109シリーズとメッサーシュミットMe410は1/72スケールでたくさん立体化しております。





1/72の飛行機ということでパーツ数は少なめ。ササッと組みあがりそうな大きさが嬉しいですね。そうは言いつつエンジンは中身が入っていたり、コクピットは見える範囲が作り込まれていたりして、「ちゃんとやりてえなあ」という気分にも対応。プラモデル好きな人が設計したんだろうなあ、という感じがします。




偉すぎるのは機体全体の塗装を施すタイミングが説明書に指示されている点。飛行機模型は塗って組んで塗って組んで……というプロセスを往復することでコクピットや脚庫の中まで色が塗られた模型が完成しますよ、というもの。しかし普通に説明書の指示通りに組んでいるとその辺の機微がなんだかよくわからないわけで、そこに対して「ここで全体を塗るといいっすよ!」とタイミングを指示してくれるのはありがたい限り。



というわけでサクサクと完成! Bf109はもともとかなり細くて小さい戦闘機なので、1/72だと完成後は手のひらサイズ。ですが、斜め後方から見たときの主翼や水平尾翼のペラペラ感は見事な実物っぽさ。つんのめるような形のE型やよりゴテゴテした形へと変化したG型以降のメッサーもカッコいいですが、こうして見るとF型は本当にシュッとしてますね。

そして機首左に輝くのが、TropのTropたるポイント、防塵フィルター。さほど大きい部品でもないですが、これこそが北アフリカのメッサーのアイコンです。ここから空気を吸い込んで過給機に取り込み、圧縮することでエンジンに送り込む空気の密度を上げ、よりエンジンのパワーを強くしようという装置なので、砂や埃が入り込むと大変……。正面に向けて空気を吸う穴が空いてれば飛行中は効率よく空気が吸えますが、しかしこの位置は砂漠で離陸しようと思うとめちゃくちゃ砂をかぶる場所。そんなわけでフィルターが必須に。ドム・トローペンなんか足のすぐ横が吸気口なんだから、そりゃフィルター必要だわ。何事もちゃんと理由があるのですねえ。
というわけで、「砂漠仕様」「デザート〇〇」みたいなメカのオリジネイターのひとつが、このBf109F-4/Tropなのではないかとおれは考えております。いわゆる「局地戦仕様」も、元ネタを辿ればけっこう切実な事情から発生している……。そんなことが立体的にわかるのも、模型のいいとこだな~と思うわけであります。1/72ならそこまで組み立ても大変じゃないし、砂漠で戦うジオン軍のモビルスーツの横に「元ネタ」として置いてみる、みたいな遊び方もアリかもしれません。
