ジェット戦闘機プラモの真髄、ハセガワ 1/48 ラプターの「偶発的なおもてなし」がすべての人を笑顔にする理由。

▲穴だらけの機体下面パーツ。機首後方とインテークを繋ぐ部分は、不用意に持てば折れてしまいそうな細さだ

 ハセガワ1/48ラプターが信じられないくらい楽しい、というのは先日書いたとおり。それが具体的な構造としてどうおもしろいのかをどうしても綴っておきたい。

 ラプターはステルス性を得るために、腹の中にミサイル格納しておく。攻撃の瞬間だけハッチを開いてミサイルを機体の外に押し出し、射撃する。このアクションは『エースコンバット』シリーズをプレイしたことがあれば見たことがあるかもしれない。「完成後もその構造を見せたければウェポンベイは開いた状態で作ればよい」というのがこのプラモの設計思想である。

 ウェポンベイは胴体下面に大きなものが2つ、胴体側面に小さなものが左右それぞれ1つずつある。味も素っ気もない胴体のフタを開けると中には配管や桁が縦横無尽に走っていて、ミサイルを瞬時に機体外部に押し出すための機構がぎっちりと入っている。スムーズなアウトラインとはうってかわって、その中にステルス性など全く考えていないメカメカしい臓物が隠されているのに興奮するという寸法だ。

 それらをすべて組み込んだ状態が上の写真。台形断面の箱が胴体の中に収まっていて、飛行時は基本的にフタをされている。正直この中身を組み立てるのはなかなかの労力が必要だ。細かいパーツをいっぱい貼らなければいけないし、そもそもフタをすれば見えなくなってしまう……(ちなみに前脚の収納庫以外、すべての扉はまったくの無加工で閉状態に組むことができる)。

 ところが、サイドの小さなウェポンベイの組立工程には「フタを閉めるなら中のごちゃごちゃしたパーツは使用しない」と書いてある。理由はふたつ。フタを閉めればこれらのパーツは見えなくなってしまうし、あまりにも内部がタイトであるため、ミサイルと補機類をびっちり格納した状態を正確に縮小するとパーツ同士が干渉してしまうのだ。

 そう。このプラモ、フタをするなら中身の工作をほとんどスキップすることができるのだ。これはプラモとしての仕様でもあるし、実機の持つ特徴そのものとも言えるだろう。各部のハッチを開くなら中身を作るべきだし、中身を作らずに閉じてもいいし、なんなら好きなだけ中身を作り込んでからハッチを閉じて完成させてもいい。プラモを組んだアナタ(=観測者)だけが、この機体の秘術を知っているのだから。

 胴体下面に収まったウェポンベイを上から眺める。幅の広い台形断面の胴体に、小さな台形断面が3つ組み合わさって隙間なく詰め込まれているのが一目瞭然だ。トイレはトイレ、風呂場は風呂場……とそれぞれの部屋にいる時に周囲の壁を眺めていると忘れがちだが、改めて家を俯瞰してみると「そういや、この壁の向こうは寝室のクローゼットだったな」と改めて思い出すような感覚。

▲ウェポンベイの直後に奇怪なカタチをした箱を組み立て、ごそっと収める。
▲いままで組み付けていた桁やウェポンベイ、脚収納庫をうまく避けるように3次元的にうねりながらエアインテークがカチリと収まる。

 ウェポンベイ上面の奇妙なスロープの上に、這うようにエアインテークを組み付ける。ひし形の断面が丸く変化していきながら左右の脚収納庫の真ん中に滑り込むと、その直後にある(やや省略されているが)2発のエンジンに空気を送っているさまが見て取れる。こんなプラモはそうそうないのだが、かといってハセガワのラプターは「中身を再現するために中身を再現している」という類のキットではない。「ラプターの外から見えるところを実直に立体化すると、自ずとここまで内部構造(内部とは!?)を再現することになってしまう」という話なのだ。

 正直、この後に機体の全貌が見えていく過程はこのプラモにとって枝葉末節と言っても過言ではない。巨大な開口部まみれでグニャグニャだった機体下面パーツが、収まるべきところに(そうとしか収まらないように!)その機体の機能を組み込まれていくと、いつしかガッチリとした剛体になっていく。

 求められた能力、それに応えるための設計。このプラモは愚直に「機体の外側」を再現することによって、他のいかなる戦闘機プラモでも見たことのないレベルで「内部構造(だと僕らが思っていたもの)」を再現していたのだ。

 だからこそ、このプラモを組んだ人は必ず知ることになる。空力性能を決定する機体のアウトラインと機体の内部に収めなければいけない機能がバラバラに存在するのではなく、双方の最適解を同時に導き出すことで出来上がったものこそ、F-22の「退屈にしてこの上なく美しいシルエット」なのだと。

<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>
からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。